なぜ阪神が引き当てた近大の大型スラッガー佐藤輝明は「40、50本塁打」「トリプルスリー」を目標に掲げたのか?
そのアシストをした田中秀昌監督は感慨深げだった。 「入学前にひと目見て、プロに行ける選手と感じましたが、4年前を振り返ると、まさか1位で重複される選手になるとは…。本当にマイペースな男で遅刻も忘れ物もよくしていましたが、練習はストイック。本人の努力が実り、この日を迎えられた。頼もしく、誇りに思います」 大学では1年春から出場。覚醒したのは本格的なフィジカルトレーニングの成果が出始めた2年の秋からだという。 「筋トレを続けて体が大きくなった。そこから打球が飛ぶようになりました」 現在のサイズは187センチ、94キロ。握力は左右とも75キロでベンチプレスは130キロの怪力である。 実は、父の博信さんは、日体大柔道部出身で、大産大の教員時代の1991年に講道館杯で優勝したことのある柔道家である。アトランタ五輪代表で世界チャンピオンの中村佳央にも勝ったことがある。現在は関西学院大准教授だが、その肉体のDNAは、柔道家の父から受け継いだものだ。 今秋の関大1回戦で通算14号を放ち、近大OBの二岡智宏(現巨人3軍監督)が持っていた最多本塁打を22年ぶりに塗り替え、リーグ2度目のMVPにも輝いている。佐藤に散々打たれた側の関大・早瀬万豊監督が、こんな証言をしてくれた。 「佐藤選手は運動能力が高くてバットスイング、打球の速さ、遠くに飛ばす力がある。足も速く、守備もうまいし肩が強い」 早瀬監督は、日本生命で投手として活躍後にコーチ、監督を歴任。仁志敏久や福留孝介らプロで活躍する選手のアマ時代を知り、社会人チームで編成された全日本の投手コーチも務めた。 「仁志は勝負強さがあり、福留は素晴らしいライナーを打つ選手でしたが、佐藤選手はホームランバッターという表現がピッタリ。全日本のコーチとして東アジア大会に同行した際に、当時の山川穂高(西武)や井上晴哉(ロッテ)も見ましたが、彼らに匹敵するか、それ以上飛ばす能力がある」と本塁打王と比較して衝撃の証言をした。 田中監督も、そのスケールの大きさにほれ込む。 「あの大きな体で懸垂を簡単に何回もやる。夏に阪神の2軍と交流戦をやりましたが、そのときにタイガースの選手が佐藤の飛距離に驚いていました」