なぜ阪神が引き当てた近大の大型スラッガー佐藤輝明は「40、50本塁打」「トリプルスリー」を目標に掲げたのか?
昨年暮れの近大野球部OB会では、重鎮の有藤通世さんから薫陶を受けた。奇しくも関西の名門、近大から野手が1位指名されるのは、その有藤さん以来実に52年ぶりだ。田中監督によれば、「いつもメジャーリーガーのスイングばかりを見ていたが、有藤さんが”もっと下半身を使え”と話した言葉が回り回って伝わったようで、下半身強化に取り組んだ。それでスイングに粘りが出て来た」と成長を感じ取っている。 もちろん、プロのレベルで簡単に成功しないことは分かっている。 前出の早瀬監督も「最初は苦労するでしょう。低めには強いが、高めの速いボールとか内角には戸惑うかもしれません。しかし、経験を積んで、どんな選手になるか楽しみです」とエールを送った。 本人が目指すのは1年目からレギュラーのポジションを獲得しての新人王だ。 「ケガをしないようにしっかりと準備して1年目から試合に出場できるようにしたい」 そして、将来については「40~50本、当たり前のように打てる選手になってホームラン王を取りたい。走塁技術を磨いてトリプルスリーにも挑戦したい」と、虎ファンがワクワクするような目標を掲げた。 マイペースを崩さなかった男が少し身を乗り出して強調したのが左打者に不利と言われる「浜風」の話を振られたときだ。 待ってましたとばかりに「浜風に負けないような強い打球を打ちたいと思います」と鼻息を荒くした。 その甲子園ではリーグ戦でプレー経験がある。 「外野の観客席が広いな、と感じた。甲子園ではホームランを打ったことがないので早く打ちたい」という。 柔道家として世界の強豪と戦ってきた父の博信さんからは、「勝負事においては相手のことまではコントロールできない。自分ができることだけに一生懸命取り組め」と言われてきたという。 いまでも、それを人生哲学としている。運命のドラフトを迎えても冷静沈着だったのも、そんな教えがあったからだろう。