「障害は個性ではない」。吃音を持つ開業医が伝えたい“あきらめずに悪あがきすること”の重要性
事前問診の導入は不可欠だった
――中学や高校は兄や親戚とは違う学校であったため、学校の共通の話題に入れないということもあったという。 北村:話そうと思っても、最初の言葉が出せないため、「ま、いいや」となって、会話が少なくなってしまいます。私と友達になってくれる友人らは、いい輩が多いな、と思っているのですが、もしかすると、吃音がある私を受け入れられる方々だけが友人となってくれていて、選抜されているのかも知れません。 吃音に関する対策の1つとして、毎月数万円をかけて、WEB問診、WEB予約などを開院当初から導入しました。事前の問診がないと、症状を聞く際に、毎回吃音と戦う必要があり、吃音がひどいと、問診が進まず、診察がすすみません。事前問診を導入することで、いつ頃から、どういう症状があるのか、どういう検査が必要そうか、どういう検査を希望されているか、既往歴はどうか、家族歴はどうか、薬はどうか、など情報を得ることができます。WEB問診を導入することで、受診する本人の調子が悪い場合でも、ご家族が事前に詳しく入力することもできます。 事前問診があるかどうかで、吃音がない医師にとっても、メリットは大きいと思いますが、吃音がある場合、無駄に発語と戦わなくても、必要な情報が得られることができ、問診で足りないことを補足的に質問すればよい、ということになり、負担が大きく減るということは、吃音がない健常者には到底理解できないことのようで、受付から問診をお願いしてもらっても拒絶される方は少なくなく、拒絶されるからか、受付も、はなから問診の案内をしない、ということも多々あり、どうやって吃音という障害を克服する形で外来をこなしていくか、悪戦苦闘しています。
吃音がない人の感覚は想像できない
――吃音という障害の難しいところについて北村氏は「吃音が出ない場合も多々あり、吃音が酷い場合には話ができないだけでなく、顔がゆがんだり、外見的にも酷い状態になることがあるものの、どういう場合に吃音が出るか、出ないのか。他人はともかく、本人すら分からない」という点だと続ける。 北村:そして、その吃音が出る状態が、どれくらいつらい状態なのか、吃音がない方には理解できないだろうし、想像もできないだろうということだろうと思います。私は幼稚園に入る前には吃音がありましたので、吃音がない人生が分かりません。吃音がない方が話すときの感覚が理解できないのですが、想像するに、吃音がない方々にとって、話すということは、空気を吸うのと同じくらい簡単なことであり、ごく当たり前のことでしょうから。吃音がない方が、何かの拍子で、どもることはあるでしょうし、大勢の前で発表する場があれば、緊張して言葉が出ない、ということがあるのかも知れませんが、ひどい吃音がある人間に取りましては、発語しようとする都度、そういう感じになっているのです。インターホンも苦手、マイクも苦手、電話も苦手。