「障害は個性ではない」。吃音を持つ開業医が伝えたい“あきらめずに悪あがきすること”の重要性
障害は個性ではない
――当初は吃音があることで、職業の選択肢が少ないと感じていた北村氏。 北村:私は、吃音があるから、職業の選択肢が少ないと感じていました。弁護士やアナウンサー、教職、営業職など、話すことが多い職業になるのは難しいと思いました。慶應義塾大学で助教時代に、教授から学生の講義を頼まれたことがありました。ポリクリという実習で数人の学生に簡単な講義をすることは何度かあったのですが、教授の代理での学生の授業となると、ちょっと違ってきます。録音してスライドを流す方法、説明内容を事前にまとめて配布する方法も考えましたが、結局、お断りすることにしました。できると信じて振ってくださった教授のためにも、チャレンジするべきだったのかも知れませんが、度胸がありませんでした。留学する前や帰国した際には、某大学のスタッフポジションを準備していただいたこともあったのですが、これも辞退してしまいました。とにかく、他のドクターよりも努力しないと認めてもらえませんでしたが、正直、できることの限界も感じました。吃音は、日常の私生活だけでなく、社会生活でも、大きな壁となっています。『障害は個性だ』と言う人には、あなたがなってみなよと思います。吃音は、『個性』で片付くような簡単なものではありません。健常者より努力するしかない、と小さい頃から感じていました。私の場合、それがたまたま勉強でした。それぞれの人が、得意なことで武器を作るしかないと思っています。 ――「それは個性だ、障害じゃない」という言説が通用するのは、その障害が、本人にとり軽い場合だけではないか。安易に「個性」ということは、当事者の苦しみを軽んじることになりかねない。 北村氏の略歴 京都府京都市出身。1990年 東大寺学園高等学校卒業、1990年 慶應義塾大学医学部入学。1995年8月マウントアーバン病院(ハーバード大学教育病院)にて総合内科を研修。1996年慶應義塾大学医学部卒業。1996年 慶應義塾大学病院内科学教室にて研修し、2年間の関連病院出向後、2000年 慶應義塾大学病院 消化器内科学教室 助教となる。2004年に1年間の関連病院出向後、2005年より慶應義塾大学病院 放射線科助教となり、放射線診断、乳がんなどの放射線治療に携わる。学位取得後、2011年より、政府助成金で米国(ニューヨーク)Mount Sinai大学 内科 肝臓教室に留学し、2014年より、英国ロンドン大学の肝臓研究所に客員講師として留学する。2015年末に帰国し、がん研究所有明病院健診センター医長などを経て、2019年12月に目黒の大鳥神社前クリニックを開院し、現在に至る。 資格・認定医・指導医医師免許 医学博士 日本内科学会 総合内科専門医 日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医 日本医学放射線学会 放射線診断専門医 日本肝臓学会 肝臓専門医 日本消化器病学会 消化器病専門医 日本脈管学会 脈管専門医 日本核医学会 核医学専門医 PET核医学認定医 肺がんCT検診認定医 放射線取扱主任者(試験合格済) <取材・文/田口ゆう> 【田口ゆう】 立教大学卒経済学部経営学科卒。「あいである広場」の編集長兼ライターとして、主に介護・障害福祉・医療・少数民族など、社会的マイノリティの当事者・支援者の取材記事を執筆。現在、介護・福祉メディアで連載や集英社オンラインに寄稿している。X(旧ツイッター):@Thepowerofdive1
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