「主婦年金」廃止は女性活躍の転換点 方針決定までの30年「連合」芳野友子会長に聞く #くらしと経済
「103万、106万、130万、150万円の壁」はないほうがいい
──3号の話と直接関係はありませんが、連合が支援する国民民主党は、所得税を払う最低ライン「年収103万円」を178万円に引き上げるべきだと主張しています。多くの人にとって減税になりますが、税収が減るので地方自治体からは反対意見も出ています。支持しますか。 支持するということではないです。連合には連合の考え方があります。国民民主党の主張の通り、所得税の課税最低額は1995年以降、見直されていません。物価上昇を考えれば、103万円は見直す必要があるでしょう。でも、「壁」の問題は、税金だけではなく、社会保険料もありますよね。税金も社会保険料も一体で改革しなければなりません。 ──103万円や130万円の壁だけでなく、106万円、150万円と税金の有無を分ける年収の壁、社会保険料発生の年収の壁と、たくさんの「壁」があり複雑です。「壁」は何をどのくらい残せばいいでしょうか。 働く時間や働く企業の規模、ライフスタイル、そうしたものに関係なく一人ひとりに中立的な制度をつくるべきだと思っています。本来なら「壁」のようなものはないほうがいいと思います。今の制度は納めるときは世帯単位ですが、給付は個人単位ですよね。そうしたところで不公平感が生まれるのではないでしょうか。どんな人生を歩んでも将来が保障されることが大事だと思います。
──女性活躍にはどんな環境整備が必要でしょうか。 女性が尊重され、一人ひとりが認められる社会をつくることです。そのためには意思決定の場への女性の参画が重要です。国際会議に行くと、女性は最低でも4割います。2023年に岡山県倉敷市で開かれたG7の労働雇用大臣会合も、半数は女性でした。私が参加するG7のグループ「レイバーセブン(L7)」も女性のトップが多い。 ところが、日本は女性の意思決定層が少ないですよね。衆議院で15.7%、参議院で3割いきません。企業も社外取締役は増えているけれども、生え抜きの女性トップが必要です。連合本部の女性役員比率は4割ですが、46ある産業別組合で、トップを女性が務めているのはUAゼンセンとサービス連合の2つしかありません。足元からもっと女性を増やしていこうと思っています。 芳野友子(よしの・ともこ)1965年生まれ、東京都出身。1984年にミシンメーカーの東京重機工業(現・JUKI)に入社。JUKI労働組合中央執行委員長、ものづくり産業労働組合(JAM)副会長。連合副会長を経て2021年10月に連合結成以来、初の女性会長に就任。 国分瑠衣子 北海道新聞社、繊維専門紙記者を経てフリーの記者に。入試・受験と労働問題を主なテーマに取材している。