「主婦年金」廃止は女性活躍の転換点 方針決定までの30年「連合」芳野友子会長に聞く #くらしと経済
──3号被保険者の半数ほどがパート労働者であれば、年収上限でいくらまで働くかという「年収の壁」に関係しますね。 ですから、連合の産別組織(同一産業別の労組)と地方連合会からは「年収の壁を超えないように仕事量を調整することが人材不足に拍車をかけている」「女性のキャリア形成を妨げる」といった課題が指摘されていました。そうした課題をもとに、6月に中央執行委員会で組織としての考え方を確認し、9月に3号廃止などの論点で、産別組織と地方連合会で討議を行いました。その結果を踏まえて10月に方針を出したという流れです。
連合の組合員の2割はパート労働者
──「3号」が導入されたのは1985年です。その3号ができた同じ年の1985年、職場での男女の雇用機会や待遇の平等を明確にした初めての法律「男女雇用機会均等法」が成立しました。主婦のための年金を整備する一方で、女性の雇用を推し進める法律ができた。ちぐはぐな印象ですが、制度設計にどういう印象を持っていましたか。 当時は厚生年金が世帯ごとに給付されたので、専業主婦は国民年金の加入が任意でした。だから離婚したら無年金になるなどの課題があったんです。そうした背景から3号はできました。厚生省(今の厚生労働省)は、男女の雇用均等が実現すれば、3号は意味を持たなくなると認識していたようですね。 ──芳野さん自身はどう考えていたのでしょうか。 私自身で言えば、男女雇用機会均等法ができて男女が同じスタートラインに立ったと。ですので、働く女性が増えて3号は減っていくだろうと思いました。ただ、均等法ができた後も、職場の多くは風土として性別による役割分業意識がすごく強かった。家事・育児は女性がやるものという意識がとても根強かったです。
──連合に加盟している組合員は、大企業の正社員が中心です。組合員の配偶者が専業主婦の人も一定数いるかと思います。3号廃止に反対意見はありませんでしたか。 3号廃止には慎重な意見もあります。時間をかけなければなりません。連合では、年収850万円未満の世帯や、子育て世帯などは、当面3号の制度にとどまれるなど、10年ほどの経過措置を設けるべきだと考えています。過去に3号だった人の年金は減額しない、育児や介護といった事情で働くことができない人に対しては年金以外の手当てをする、など配慮をもった制度を国に求めます。育児や介護といった課題は、3号以外でセーフティーネットをつくるべきだと思うし、制度は一人ひとりに中立であるべきです。 また「大企業の正社員が中心」と言われますが、連合の組合員約700万人のうち、その2割にあたる142万人の組合員がパート労働者です。このうち79万人が厚生年金の加入対象にならない週20時間未満で働いています。組合員自身にも3号被保険者がいるんです。例えば、流通・サービスなどでつくるUAゼンセンの組合員の約4割は週20時間未満のパートで働く労働者で、3号被保険者と推計されています。「専業主婦のための年金」という見方は適切ではありません。