なぜメダル期待の女子バレーが惨敗し不安視された男子バレーが決勝Tへ進むことができたのか…「機能しなかったベンチワーク」
第1セットをドミニカの高さとパワーに圧倒されて10-25の大差で落とす。デラクルスやリベラの強打の前になす術がなく日本の攻撃は2m級のブロックに防がれ、被ブロックポイントは5点を数えた。 第2セットも序盤に4連続失点してペースを奪えず、古賀のパイプ攻撃や島村の移動攻撃などで22-22まで追いついたが、終盤に競り負けた。マルティネス、ゴンサレスらにブロックの上から打たれ、リベロのカスティージョのまるでコートすべてをカバーするような驚異的な守備力と、セッター並みの正確なトスに苦しんだ。 攻撃力は世界でもトップクラスのドミニカの弱点は、守備のミスからの自滅パターン。だが、日本以上にディグが機能した。また高い打点からフェイント、プッシュで揺さぶられコートのど真ん中に落とされるという痛い失点が目立った。 植田氏は、この部分に対策の遅れが浮き彫りになっているという。 「男子ではセッターの関田選手が前衛のときは、ブロックに飛ばずに後ろに下がってフォローに入っている。相手がハイセットになったときに、籾井選手を1枚下げてフェイントカバーさせる対処があってもよかったのではないか」 もう後がなくなった日本は、第3セットに守備を立て直し、カスティージョの守備範囲外を狙うサーブで切り崩して25-19で奪い返すが、第4セットは、また立ち上がりにマルティネス妹を止められず4連続得点を許し、中盤に7点差をつけられるまでゲームを一方的に支配された。 植田氏は、この第4セットにも気になる部分があったという。13-18の劣勢の場面で、この日、最も効果的な攻めを見せていた島村にサーブが回ってきたのだが、石井をピンチサーバーに送ったのだ。 「ドミニカは島村選手のサーブを嫌がり効果率が高かった。なぜ代えたのかが理解できない。点差はあったがまだ流れを取り戻すチャンスがあった」 石井のサーブはオーバートスでさばかれマルティネスの姉にパイプ攻撃を決められている。 選手交代に関する疑問は他にもあった。黒後のスパイク成功率は低かったが、選手交代のカードは切らず、リザーブのミドルブロッカーの奥村と山田にも出場チャンスは巡ってこなかった。 「古賀選手が一人で孤軍奮闘していた。第3セットには黒後選手の活躍があったが、ゲームを通じては調子を出せていなかった。例えば、セッター対角に古賀選手を置き、林選手、石川選手を使うというオプションがあってもよかったのではないか。また、まったくドミニカの真ん中の攻撃を止めることができていなかったのだから、ミドルブロッカーをピンチブロッカーに使うような選手交代もあってよかったと思う。第4セットにミドルブロッカーにバルガス、アウトサイドにマルティネス姉を入れるなど、先手先手と動いていたドミニカのベンチワークとは対照的だった」 ドミニカは面白いようにパイプ攻撃やクイックを使い、真ん中の攻撃で得点を重ねたが、日本は最後まで対応しきれなかった。 「もっと山を張ったリードブロックとレシーブとの連携があってもよかった。ブロックの上から打たれるのであれば、まずサーブで崩さねばならないが、相手のローテーションを見据えて、誰がどう打つのかが徹底されていなかった。例えばライトを狙ってクイックを潰し、ブロックに2枚飛ぶなどの傾向と対策が見えなかった」 実は、植田氏は、五輪前哨戦とも言える5、6月の「ネーションズリーグ」の戦いから1次リーグで苦戦する予兆を感じていたという。 「日本はメンバーを固定して戦った。他のチームはメンバーを入れ替えて色んなことを試していた。データも拾われるだろうし、何かが起きた時の対応、修正に不安だった。チームの状態は、あそこがピークになり、ピーキングという部分でも失敗したのかもしれない。韓国やドミニカは、おそらく五輪にチーム状態のピークを合わせていた」