6月の日銀短観 注目すべきポイントは?
6月調査の日銀短観が7月1日に発表されます。どんなポイントに注目すべきか。第一生命経済研究所・藤代宏一主任エコノミストの解説です。 【グラフ】コロナ不況なのになぜ空前の株高? 謎ひも解く3つの要因
「製造業」より「全産業」に
7月1日発表の日銀短観(6月調査)を株式市場目線で予習してみようと思います。通常、日銀短観は、大企業「製造業」の業況判断DIが最も注目されますが、株式市場の予想に重点を置くなら大企業「全産業」の業況判断DIに注目すべきでしょう。大企業全産業の業況判断DIは、製造業を中心に改善が見込まれている一方、既に発表されている類似指標(ロイター短観、PMI等)では非製造業の弱さが目立っており、この点は不気味です。国内景気の回復が鈍い中、非製造業のDIが低下する可能性も否定できません。グラフの通り大企業全産業の業況判断DIはTOPIXのEPS(予想一株あたり利益)と連動制を有しますから、株価を予想する上で非常に重視すべき指標と言えます。 非製造業のうち、弱さが予想されるのは対個人サービス、宿泊・飲食などBtoC(対個人取引)のウエイトが高い業種。情報サービス、通信、対事業所サービスなどBtoB(対事業所取引)系の業種が底堅さを維持するのと対照的な姿となり、業況が二極化するいわゆる「K」字型になると思われます。
輸出向けは回復を見せているが…
ここであらためて内需、とりわけ個人消費の弱さをマクロ指標で確認します。まず国内で生産された財がどこへ出荷されたかを示す出荷・内訳表に目を向けると、4月時点で、全体の約2割を占める輸出向けがパンデミック発生前の2020年1月水準を約4%上回る水準へと回復しているのに対し、国内向けは2%強下回る水準で停滞しています。製造業は世界的なIT関連財需要の高まりや、米国における自動車販売の回復など海外需要を上手く取り込んだ一方、国内向け需要は停滞し、生産の足かせになった構図が浮かび上がります。いわゆる巣ごもり需要などから耐久消費財の売れ行きは好調だったものの、対面型の経済活動が落ち込む中、それ以外の広範な品目の需要が落ち込んだと考えられます。