もはや米国は「コロナバブル」ではない
株高局面が続く米国ではバブル化への懸念が常に指摘されてきました。米国株の現状をどう見るか。第一生命経済研究所・藤代宏一主任エコノミストの分析です。 【グラフ】コロナ禍から著しい回復基調 米景気は「過熱」なのか?
予想EPSはコロナ前の水準回復
2020年半ば以降、「コロナバブル」とも言われるほどに割高な水準まで上昇した米国株は随分と割高感が解消されてきました。なお、本記事でいう割高・割安とは、株価を一株当たり利益で割ったPER(株価収益率)が高いか低いかをもって判断します。
S&P500の予想PER(株価÷先行き12か月の利益予想)は21.4倍となお高水準ですが、分母の利益予想が日増しに切り上がっている(アナリストが業績予想を上方修正している)ため、PERは緩やかに低下しています。株価の上昇を上回るペースでEPS(1株当たり利益)が増加することで、PERが低下するという理想的な姿です。1~2か月先の予想EPSの推移をみると、既にコロナパンデミック発生前の水準を回復し、現在も順調に拡大を続けています。 こうした見事なV字回復が、現在の株価水準を正当化しつつあるということです。またEPSは向こう2年程度にわたって6~10%程度のさらなる拡大が予想されており、来期の予想EPSを基に算出したPERは20.1倍、再来期ベースでは18.2倍となっています。
株高に業績が追いついてきた
コロナ禍で高値更新を連発する米国株については、大規模金融緩和によって“じゃぶじゃぶ”に供給されたマネーが金融市場になだれ込み、やや「不健全」な要因で上昇したとの評価が多かったのは事実ですが、ここへきて業績が追い付いてきたことで健全な姿に変わりつつあります。業績の後ろ盾がある以上、もはやコロナバブルという言葉はなじまない印象があります。
大型テック株は今後も強い?
なお、アフターコロナの世界では、GAFAM(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル、マイクロソフト)を中心とする大型テック株のブームが過ぎ去るといった見方も一部にあります。そうなれば株価上昇のけん引役が不在となり相場が停滞することも考えられますが、アナリストの業績予想を見る限り、大型テック株の強さは今後も続きそうです。GAFAMの予想EPSは、2021年入った後も他の銘柄を圧倒する勢いで拡大し、直近の決算通過後に一段と伸びを高めています。
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