コロナ禍でも好調な業種がある? 世界経済で進む「二極化」
新型コロナウイルスで甚大なダメージを受けている世界経済ですが、すべての業種が不調なわけではありません。コロナ前の水準を上回る回復を見せている業界もあるといいます。第一生命経済研究所・藤代宏一主任エコノミストに寄稿してもらいました。 【グラフ】イスラエルのワクチン政策が株価の“先行指標”になる?
ハイペースで回復する製造業
コロナ禍において世界経済の二極化が進んでいます。ここでいう二極化とは製造業の強さとサービス業の弱さです。サービス業の弱さについては対面・移動・集合が制限されている現状、もはや説明する必要性は乏しいと考えられます。 他方、製造業はかなりのペースで改善しています。世界の製造業の状況を示すグローバル製造業PMIは約3年ぶりの高水準にあり、2008年のリーマンショック後では3番手あたりの高さに位置しています(公表頻度は月次)。製造業の回復を主導しているのは「自動車」と「IT関連財」です。
「自動車」と「IT関連」が好調
まず「自動車」については生産・販売が回復傾向にあります。本来は対面型サービス消費に向かうはずだったおカネや政府からの給付金が自動車購入に向かった可能性があり、その点を踏まえると改善の持続性はやや心もとないのですが、それでも主要市場の米国と中国はこれまで順調な回復経路をたどってきました。米国と中国の新車販売台数は2020年後半以降、コロナ禍前の水準を明確に上回っています。これらが大きく貢献したことで、日本からの輸出量はコロナ禍発生前の水準を回復しています。 次に「IT関連財」については5G対応スマートフォンの投入、通信基地局の整備、データセンターの能力増強、在宅勤務の進展に伴うノートパソコン出荷の増加に対応するための需要が旺盛です。そこで世界の半導体生産の一大拠点である台湾の輸出動向に目を向けると、12月の輸出受注(米ドルベース)は前年比+38.3%と驚くほどの強さが示されています。輸出全体の3割強のシェアを有する電子製品は+58.4%、同じく3割強を有する情報通信(ICT)製品は+38.2%と著しい伸びを記録しています。現在、半導体工場はフル稼働に近い模様ですが、それでも生産量は需要に追いついていません。最近は自動車に搭載するための半導体が不足し、自動車生産が一部滞る事態に発展しています。