シャープに聞く「AQUOS sense9」の進化と「AQUOS R9 pro」を作ったワケ 根底に“AQUOS R9の刷新”あり
プロセッサにSnapdragon 8s Gen 3を選択した理由
―― 今回、プロセッサは「Snapdragon 8s Gen 3」です。フラグシップモデルだと、「s」がつかない「Snapdragon 8 Gen 3」も多いですが、なぜこれを選択したのでしょうか。 中江氏 「Snapdragon 8 Elite」も出ている中では、他にも上位のプロセッサはあります。ただ、パフォーマンスが出ないというユーザーの不満は既にだいぶ減っています。一方で、カメラはもっときれいに撮りたいというニーズはある。パフォーマンスとカメラ性能を2軸で考えたとき、Snapdragon 8s Gen 3はCPU性能が少し落ちる一方でISP(Image Signal Processor)は強化されていて、十分な性能が出ます。当然、コスト的な問題もあります。いくらフラグシップでも、めちゃくちゃ値段が上がりすぎてしまうのはよくない。その全てのバランスを考えると、今回の選択はベストだったと思っています。 実際、Snapdragon 8 Eliteがないと動かないものがあるとすると、世の中のほとんどのスマホで動かなくなってしまいます。そのユースケースが加速度的に広がるかというと、なかなか難しい。Snapdragon 8 EliteはCPUにOryonを使っていて、パフォーマンスと省電力のバランスが取れているのでモバイルにも使いやすいのですが、あれがないとどうにもならないというシーンはまだまだ少ない。そこにコストを投入するよりも、今使えるパフォーマンスとしてカメラ性能を上げていくことが必要だと考えました。 ただし、今後も同じかというとそうではありません。それがあることによって、ユースケースやユーザー体験が変わる瞬間は必ず出てきます。技術の進化でコンテンツも進化していくので、生成AIなどの動向も見ながら最適なSoCを選び続けなければいけないと考えています。
技術からの提案で、カメラリングにマグネットでアタッチメントを装着
―― 販路に関しては、キャリア版としてドコモのモデルがあり、あとはオープンマーケット版だと思います。KDDIの「au +1 collection」もこれと同じと考えていいでしょうか。 清水氏 そうなります。KDDIさんには、オープンマーケット版とまったく同じものを取り扱っていただく形です。 中江氏 X(旧Twitter)などでも、auから出ないのかというお声はいただいていました。au +1 collectionはアクセサリー的な扱いではありますが、取り扱っていただけたのはよかったと思います。やはり日本市場においては大きな販路ですからね。 ―― シャープ直販の「COCORO STORE」で買う人も増えているのでしょうか。 中江氏 その動きは大きいですね。最上位モデルのAQUOSを買ってくださる方は、他のAQUOSも使っていることが多い。そういう方は、COCORO STOREを使う傾向があります。一方で、各キャリアやIIJmioで買う方は、AQUOSをスマホの1つと見ているので、少しだけ層が違うような気もします。 ―― 周辺機器も工夫されていると思います。カメラリングにアタッチメントを付けられるのは面白いですね。 中江氏 こういうものを作れると言ったら、乗ってきたのがエレコムさんとLooCoさんでした。AQUOS R9 proの設計をするときに、リングの部分がステンレスになっているので、レンズフィルターをじか付けしたいというところから企画が始まっています。 ―― そこは、最初からフィルターを付ける前提だったんですね。 中江氏 技術メンバーからのアイデアです。今までだとケースがあって、そこにねじ止めするような感じでしたが、今回はカメラだよねというところからスタートしているので、じかに付けてしまおうと無邪気な発想から始まりました。ただ、この位置にマグネットをつけるのは正気ではないと思います(笑)。 清水氏 普通だと、地磁気センサーもジャイロも狂ってしまいますからね(笑)。作る側もワクワクしながらやっていたのがよかったです。 ―― その干渉は解決できたのでしょうか。 清水氏 しました。ちなみに、この機種はQi対応ですが、通常だとQiも狂ってしまいます。ですが、微妙な位置調整をして解決しました。 中江氏 内部でもノイズが発生しないよう、保護をしています。