「残り15%のこだわり」を妥協したら、「ソニーではなくなってしまう」…最高幹部が「重視する」、一見「矛盾」している「2つの鉄則」
ソニーはどこを目指すのか
ソニーグループの業績が好調だ。 ゲームや映画、音楽などのエンターテインメント事業を軸に、多様な事業からの安定的な収益確保を目指しつつ、現在の使命を「テクノロジーの力で未来のエンタテインメントをクリエイターと共創する」と表現している。 【画像】素材は、この地球…圧倒的グラフィックで魅了する人気ゲーム では、そんなソニーが現在、重要視している「テクノロジー」とはいったいどのようなものなのだろうか? 過去のソニーには、「ウォークマン」があり、「PlayStation」があった。技術が特定の商品=モノという形をとりやすい時代は、それが会社の顔となり、ブランドイメージを訴求しやすかった。つまり、今より「わかりやすい」時代だった。 ところが現在は、テクノロジーがソフトウエアを介する存在となったために、モノに象徴される時代に比べ、企業としての存在感をアピールしにくくなったともいえる。 そうした時代にあって、ソニーグループとして目指す技術、重視する技術とはなにか? 今回、ソニーグループ・CTO(最高技術責任者)を務める北野宏明氏に単独インタビューする機会を得た。同氏に、「10年先」を見据えたビジョンを訊いた。
ソニーの「現在地」
まずは、現在のソニーグループの位置付けについて確認しておこう。「グループ」とあるように、現在の同社は複数の事業を柱とする事業体になっている。 PlayStationを軸にしたゲーム、映画やドラマなどの映像ビジネス、音楽とその権利に関する映像ビジネス、スマートフォン用のイメージセンサーなど半導体を製造するビジネス、そして、保険や銀行などの金融事業がある。 これら各グループを統合するのが「ソニーグループ」という会社であり、多くの人が「ソニー」と聞いて思い浮かべるエレクトロニクス事業が、現在は「ソニー」という社名を受け継いでいる。 金融は事業の性質が異なるので別として、それ以外の領域は、なんらかのかたちで「エンターテインメントが関わる」もの、といっていい。 では、そのエンターテインメント領域で、将来的に技術はどう絡んでいくのだろうか? 「技術」というと、我々は手に取ることができる商品や、最新のAIなどの姿を思い浮かべる。ソニーの将来を担う技術も、そういった領域と重なるところがあるが、北野氏が考えるソニー姿は、もう少し違うものであるようだ。