久保建英のビジャレアル選択は正解だったのか?
スペイン内外の複数のクラブによる争奪戦が繰り広げられていた日本代表MF久保建英が、レアル・マドリードから同じラ・リーガ1部のビジャレアルへ期限付き移籍することが7日までに合意に達した。メディカルチェックなどを残しているなかで、正式発表までいよいよ秒読み段階に入った。 久保の争奪戦には仏リーグアンのパリ・サンジェルマンや伊セリエAのACミラン、独ブンデスリーガのバイエルン・ミュンヘンなど、ヨーロッパの名だたる強豪や名門も続々と参戦した。まさに引く手あまたの売り手市場がレアル・マドリードおよび久保の意向でラ・リーガ1部への期限付き移籍に絞られ、オサスナやグラナダが先行したなか、最も遅れて名乗りをあげたビジャレアルが射止めた形だ。 マドリードを拠点とするスペインのスポーツ紙『アス』と『マルカ』によれば契約は1年で、買い取りオプションはついていない。期限付き移籍期間の満了後に完全移籍へ移行できる、買い取りオプションが設けられなかった点をレアル・マドリード、そしてビジャレアル双方の視点から見れば、2019-20シーズンのマジョルカに次いで武者修行を積む、19歳の久保の価値があらためて伝わってくる。 一時は有力候補として浮上したセビージャとの交渉が一転して破談になったのは、セビージャが買い取りオプションを要望したからだとされる。つまり、レアル・マドリードとしてはいかなる場合でも、マジョルカで十分に満足のいく成長曲線を描いた久保を手放す意向はないことを意味する。 逆に考えればビジャレアルとしては、1シーズンでクラブを去ることを承知の上で、新シーズンに臨む中心選手として久保を必要としていることになる。その背景は久保の獲得を強く望み、交渉にも直接出馬したスペイン出身のウナイ・エメリ新監督の存在を抜きには語れない。
バレンシアでフアン・マタ、UEFAヨーロッパリーグ3連覇を達成したセビージャではイヴァン・ラキティッチやエベル・バネガと、エメリ監督は率いたチームでトップ下の選手を置くシステムを重用してきた。2シーズン目の途中だった昨年11月に成績不振で解任された、英プレミアリーグのアーセナルでも[4-2-1-3]や[4-3-1-2]など、トップ下が存在するシステムを好んでいる。 5シーズンぶりに母国で采配を振るう来シーズンへも、自身が特にスペインで結果を残した戦い方で臨むはずだ。しかし、2019-20シーズンにトップ下や、あるいは[4-3-3]のインサイドハーフとして11ゴール9アシストをマークした、下部組織出身でもあるビジャレアルのレジェンド的存在、35歳のサンティ・カソルラがシーズン終了とともに退団。カタールのアル・サッドへと移籍した。 ポッカリと空いたカソルラの穴を補う役割を、新型コロナウイルスによる中断明け以降は、マジョルカの攻撃を差配するパフォーマンスを発揮した久保に託したい――エメリ監督がこう考えているのならば、熱烈なラブコールもうなずける。実際、マジョルカで右サイドアタッカーとしてラ・リーガ1部にセンセーションを与えた久保にとっても、新天地でトップ下を担う意義は大きい。 まずはチームメイトたちの顔ぶれだ。後方のボランチには身長190cm体重91kgのビセンテ・イボーラ、カメルーン代表に名前を連ねる身長184cm体重78kgのザンボ・アンギサが並ぶ。サイズと強さを兼ね備えたダブルボランチは、守備面における久保の負担を大きく軽減してくれるだろう。 最前線には2019-20シーズンの得点ランク3位で、スペイン人選手では最多となる18ゴールをゲット。ヨーロッパサッカー連盟(UEFA)が選出する、ラ・リーガ1部のベストイレブンにカソルラとともに名前を連ね、スペイン代表にも選ばれた28歳のジェラール・モレノが君臨する。 さらに右サイドアタッカーとして爆発的なスピードと高度なテクニックを武器に、ナイジェリア代表としても活躍する21歳のサムエル・チュクウェゼが異彩を放つ。ビジャレアル下部組織出身のレフティーには、リヴァプールやチェルシーのプレミアリーグ勢も興味を示している。