久保建英のビジャレアル選択は正解だったのか?
FC東京から昨年6月にレアル・マドリードへ加入した久保に対しては、当初は3部リーグに相当するセグンダ・ディビシオンBに所属するリザーブチーム、レアル・マドリード・カスティージャでプレーさせ、まずはスペインのサッカーそのものに順応させる育成プランが描かれていた。 しかし、トップチームに帯同したプレシーズンで何度も見せた、物怖じしない度胸と卓越したパフォーマンスが評価を一変させた。スペインではなくラ・リーガ1部に早く適応させるべきだ、という考え方を久保本人も望んだこともあり、昇格組のマジョルカへ急きょ期限付き移籍した経緯がある。 ただ、開幕直後の加入とあって首脳陣の信頼を勝ち取るまでに、さらに周囲との連携を深めるまでに多くの時間を要した。ひるがえって今回は10日に予定されている新シーズンへ向けた始動に間に合う上、何よりもエメリ監督のたっての希望を受けての加入となる点で状況はまったく異なる。 加えて、戦力的にも劣っていたマジョルカでは必然的に引いて守る戦い方が多くなり、久保自身も守備に追われる時間が多かった。中断期間中に『アス』に掲載されたインタビューでは「攻撃と守備の両方で多くのことを学んでいる状況が、自分の成長を大きく助けてくれています」と感謝の思いを口にしたが、降格したマジョルカとは異なり、ビジャレアルは2019-20シーズンを5位で終えている。 2019-20シーズンを制したレアル・マドリードと、2位のバルセロナの2強を除いた18チームのなかで、ビジャレアルがあげた総得点63は最も多かった。強力攻撃陣をけん引し、自らもモレノに次ぐゴール数をあげたカソルラが抜けた穴を感じさせない活躍を演じれば、マジョルカで大きな爪痕を残した右サイドに加えて、真ん中でもラ・リーガ1部勢で十分に通用することを証明できる。 登録および出場の上限が「3」と定められている、EU圏外枠を行使されているレアル・マドリードのブラジル代表トリオの一人、FWヴィニシウス・ジュニオールが順調ならば年内か年明けにもスペイン国籍を取得する見込みになっている。つまり、2021-22シーズンには常に久保の前に立ちはだかってきた、自分ではどうすることもできないEU圏外枠に空きが生じることになる。 「すべては自分次第ですけど、レアル・マドリードに居場所はあると思う。素晴らしい選手になってマドリードの白いユニフォームを着て、大きなことを成し遂げたい」 前出の『アス』のインタビューでこう語ってもいた久保にとって、9月12日に開幕予定のラ・リーガ1部の新シーズンだけでなく、UEFAヨーロッパリーグにも出場する新天地ビジャレアルでは、自分の力で運命を変えることのできる、心の底から待ち望んできた戦いが待っている。 (文責・藤江直人/スポーツライター)