「必要な時点まで金融緩和を継続」日銀・黒田総裁会見7月21日(全文1)
急速な円安は望ましくない
黒田:従来から申し上げておりますとおり、為替相場は経済・金融のファンダメンタルズを反映して、安定的に推移するということが最も重要だと考えております。この点、最近のような急速な円安の進行は先行きの不確実性を高め、企業による事業計画の策定を困難にするなど、経済にマイナスであり望ましくないというふうに考えております。 わが国経済にとって大事なことは、円安によって収益が改善した企業が設備投資を増加させたり、賃金を引き上げたりすることによって、経済全体として所得から支出への前向きの循環が強まっていくということであります。現在のように為替相場の動きが急速な場合には、企業がそうした前向きの動きを取ることをためらう、ちゅうちょする面があり、そうした面からも急速な円安は望ましくないと考えております。日本銀行としては政府とも緊密に連携しつつ、引き続き為替市場の動向やその経済・物価への影響を十分注視してまいりたいというふうに考えております。 幹事社:ありがとうございます。幹事社からは以上です。各社さんどうぞ。
物価上昇の勢いについて、従来と比べて認識は変化したか
時事通信:時事通信の【イマチ 00:14:47】と申します。よろしくお願いします。物価の見通しについてお伺いします。今回の展望レポートでは、先ほど総裁がおっしゃられた生鮮食品とエネルギーを除くベースで、22年度と23年度の見通しが上昇で、24年度は横ばいとなりました。総裁はかねて2%の物価目標を安定的に実現するまでには時間は要するというふうにお考えを述べられていると思いますけれども、先般の短観を見ても、企業の価格転嫁の動きっていうのは進んできているように思います。基調的な物価上昇の勢いについて、従来と比べて認識の変化などございますでしょうか。ご所見をお聞かせください。 黒田:今回の展望レポートで消費者物価の中心的な見通しは、2022年度は年度平均でプラス2.3%となっております。これは本年末にかけてエネルギーや食料品、耐久財などの価格上昇に加えて、携帯電話通信料のマイナスの寄与の剥落もあって上昇率を高めていくというふうに予想されることを踏まえたものであります。 ただ、先ほど申し上げたように、もっとも年明け以降はエネルギー価格の押し上げ寄与が減衰し、さらにコスト転嫁の動きも徐々に一巡していくというふうに予想しておりまして、この結果、来年度の消費者物価の上昇率はプラス1.4%まで減速するという見通しになっております。このように、展望レポートでは2%の物価安定の目標を持続的・安定的に実現する見通しとはなっておりませんので、先ほど申し上げたとおり、金融緩和を継続する必要があるというふうに考えております。 他方でご指摘のように、最近のいろいろなアンケート調査等を見ましても、企業の今後の売り上げの価格の見通しであるとか仕入れの価格の見通しであるとかいうものも上昇しておりますし、それからさまざまな予想物価上昇率も、短期がかなり上昇するだけでなくて、中長期も緩やかに上昇しているというところがありますので、価格転嫁の動きが少し広がってきてるということは事実だと思うんです。ただ、その下でも今申し上げたように、年明け以降はエネルギー価格の押し上げの寄与が減衰しますし、その他の事情もあって、来年度は1.4%まで減速するという見通しになっており、2024年度でも1.3%ぐらいと。