「省庁再編」は成功してきたのか? 自民総裁選の争点、過去に学ぶ
自民党の総裁選で中央省庁の再編が一つの争点になってきた。 河野太郎・規制改革相は厚生労働省の分割を、高市早苗・前総務相は「情報通信省」、「サイバーセキュリティー庁」の新設を、岸田文雄・前政調会長は「健康危機管理庁」の新設を、野田聖子・幹事長代行は「子ども庁」新設を掲げている。だが、一般国民からすると行政組織をいじっても看板の架け替えだけで中身は変わらないのでは、という醒めた見方もある。省庁再編が実現した場合、うまくいくのか。これまで省庁再編は行われてきたが効果は出ているのか。過去を振り返ってみたい。(行政学者 佐々木信夫・中央大名誉教授)
「省庁」そもそもの役割は?
私たちに「ゆりかごから墓場まで」、公共生活に関わる問題を解決する、それが行政の役割だ。その中身は時代とともに変化し、それを担う行政機関も常に見直しが必要となる。 同じ行政でも、国と地方では役割が異なる。国の場合、全国で統一し、公平に、しかも中央が強いリーダーシップを発揮した方が望ましい分野を担う。時代や環境の変化に伴い組織を見直すことも重要となる。
日本の中央省庁は、「1府12省」からなる。「1府」は内閣府を指し、総務省、法務省、外務省など大臣をトップとする11省と警察庁を管理する「国家公安委員会」で12省だ。それに省に準ずる扱いのデジタル庁と復興庁がある。
省庁の構造は?
国の行政組織は、内閣統括のもとに府・省があり、次いで外局として庁・委員会がある。内部部局には官房、局、課・室があり、必要に応じ部が置かれる。また、本省以外にも、付属機関、地方支分部局などの出先機関がある。 大臣官房は局より上位に位置づけられ、省庁内部の総合企画・調整に当たるほか、組織管理に関する人事、予算、文書、情報管理に当たり、広報や統計調査など他の局に属さない仕事をしている。 大臣官房や局の所管する事務の組織内分担を行うため、課、室、分掌官が組織される。課は課長→係長→係員からなり、通常10人前後の人員で構成される。