「省庁再編」は成功してきたのか? 自民総裁選の争点、過去に学ぶ
2001年の省庁再編「成果」は?
この時行われた省庁再編について、今回の総裁選の各候補者がその見直しに目をつけている。 ではこれまでの省庁再編で成果はあったのか。 1府12省8大臣庁体制を1府12省庁に再編統合したから、省庁体制は減量化したなどと2001年の橋本首相の大ぶりな省庁再編を評価する見方が多かった。確かにひと時、大臣の数も減りスリム化したように見えた。 しかし重要なのは仕事の中身だ。例えば、建設省と運輸省が統合され国土交通省になったが、もし建設省の局と運輸省の局がそのまま国土交通省に移っただけなら、外観が変わっただけで中身は変わらず「看板の掛け替え」にすぎないと言われよう。実際、外観ほどに中身は変わっていない。 省→局→課の3層構造になっているのが省庁官僚制だが、省はもとより、局レベルを見ただけでも不十分で「課」を見なければならない。実際「法解釈の権限を持つ原課」とされる「課」こそが日本の行政組織の基本なので、そこが変わったかどうかが問題を見るポイントとなる。 省庁再編の中身を見る場合、仮に複数の省庁が統合されたとして、統合前のX省A課とY省B課がそのまま新たなZ省に横滑りしただけか、2つの課が再編統合され新たなC課となったどうか。再編前の「省庁の壁」を越えた課が設置されているかどうか。省庁再編の効果を測定する試金石はここである。
実働部隊の「課」はそのまま
実際、2001年改革では、国土交通省に政策課が、文部科学省に学術情報課ができたが、中央省庁全体にある約1000の課のうち再編統合によって生まれた課は2つだけで、あとは横にスライドしたものだった。 確かに、2つの省庁の統合で大臣は2人から1人に、事務次官も2人から1人に減るなど外見上は減量化したように見える。 だが、大臣は1人でも副大臣が新たに1~2人、事務次官はひとりでも同格の「○○審議官(次官級)」が新たな省に置かれ、しかも1年交代を原則とする次官人事はX省出身の次官が誕生すると次はY省出身の次官が据えられるなどタスキ掛け人事が行われている。 統合された省で局の課長、補佐、係長、係員までX省とY省は新たなZ省の人事として相互交流、融合が行われているかといえば、本籍を旧省に残したまま一時的に異動してもすぐ戻ってくるやり方が残っており、本当の融合は進んでいない。