「東京一極集中」のメリット・デメリット 論点は? 解決策は?
日本の「ヒト・モノ・金」が集まる首都・東京。政治・経済など国の高次中枢機能の大部分が集中する現象は「東京一極集中」と呼ばれ、様々な角度から議論の対象となってきた。総務省によると、2019年だけをとっても、東京圏(東京、埼玉、千葉、神奈川)は転入者が転出者を上回る「転入超過」が14万8783人となった。識者の中でも、この傾向を「日本を救う」と肯定的に捉える人と、「諸悪の根源」だと否定的に断じる人がいる。そもそも何が論争の的となっているのだろうか。元都職員で行政学者でもある佐々木信夫・中央大学名誉教授に、東京一極集中のもたらした「功」と「罪」について論じてもらった。
いつの間にか“2つの国”に
東京は日本経済を牽引する機関車だ。国税収入の4割も稼ぐ“稼ぎ頭”であると言われる。もとより、国民の約1割の都民が他の道府県民より4倍も生産性が高く国税の4割を稼いでいる訳ではない。大企業の本社本店の集まる東京が全国の支社支店、工場の稼ぎを税制上掻き集めているに過ぎない。中央集権的な税制がそう見せているだけだ。 ともかく、こうした「東京機関車論」は政財界に未だ根強く、識者には「東京一極集中が日本を救う」との論もある。この立場からすると、人口減少期の日本でも東京に頑張ってもらわないと困る、という論調につながり、小池都政の「国際金融都市構想」もその流れの中で位置付けられる。 一方、東京一極集中はこの国のかたちを歪め、「諸悪の根源」だという見方もある。ヒトもカネも情報も東京が吸い上げ、残された地方は活力を失い、過疎化の末に消滅の危機に瀕(ひん)する……、という考え方だ。
読者の方々はこの両論のいずれを採るだろうか。東京一極集中の見方は立場で様々。ただ言えることは、事実としてこの国はいつの間にか“2つの国”に分かれていると言うこと。一極集中の止まらない「東京国」と過疎・人口減の止まらない「地方国」にである。
明治中期は9位 一気に進んだ東京への人口集中
もっとも、日本が昔から東京一極集中だった訳ではない。130年前、府県制度が始まった頃(明治23年。1890年)の東京府の人口はたった150万人で全国9番目。農業の盛んな新潟県が1番だった。国家人口3500~4000万人時代の話とはいえ、当時は決して東京一極集中ではなかった。 ところがその後、近代化が進むスピードに合わせ東京の人口は急膨張する。1928年500万人、1962年1000万人、そして2019年には1394万人(2019年10月1日現在。「東京都の人口」推計より)と約1世紀で9倍に膨れた。日本の総人口も4倍近く増えたが、東京はそれを遥かに上回る規模で人口が爆発した。国土面積のたった0.6%に過ぎない東京都に1400万人、3.6%の東京圏(1都3県)に3600万人も住んでいる。これが人口面からみた東京一極集中の姿だ。