“接待疑惑”で注目「総務省」ってどんな組織?
電波・放送事業会社であるNTTと東北新社による総務省接待問題。官僚幹部に止まらず、総務大臣経験者の高市早苗、野田聖子、現職の武田良太氏まで「疑惑」の渦中にある。ただ、「ふるさと納税」など地方行政を管轄する旧自治省の後継とのイメージが強い総務省がなぜ通信・電波行政も司っているのかピンとこない読者も多いのではないだろうか。総務省とは何をしている省なのか。歴史を振り返りながら見てみたい。(行政学者・佐々木信夫中央大名誉教授)
時代は1996年にさかのぼる。当時の橋本龍太郎首相が中央省庁再編に取り組んだのだ。翌97年に出された行政改革会議の最終報告書には、省庁再編について(1)内閣機能強化の必要性(2)縦割り行政の弊害を排除する――ことなどが目的だと記載されている。
その結果、2001年1月6日、それまでの1府22省庁体制を1府12省庁に再編統合する行政改革がなされた。しかし、見せかけ上、省庁数は半減したが、厚労省しかり、文科省しかり、総務省しかり、再編後の組織で問題が次々と浮上してくる。なぜなのか。
当初目的は「縦割り弊害の排除」
「省あって政府なし」「局あって省なし」――。日本官僚制の特徴を一言で表す言葉だ。各省の職員はそれぞれ省ごとに採用され、人事異動も省内の本庁と出先機関の間で行われ、退職後の外郭団体などへの天下りも各省が面倒を見る。“政府職員”として採用されたはずの国家公務員だが、“省”職員のようなイメージで実際はそれぞれの採用省庁が本籍となり、一部の人事交流を除き、その省庁の中で暮らす。そうした仕組みで「省庁一家」が形成され、縦割り行政が色濃くなっていった。 専門性を高めた「スペシャリスト」になるという意味でメリットもあるが、農林官僚は農水省が、財務官僚は財務省が、外務官僚は外務省が日本の“政府”だと思って仕事をし、他省庁は視野の外になる。議院内閣制での省庁編成は類似の仕事、目的の同質性に応じて組織化を図る点で合理性はあるが、行き過ぎると「省あって政府なし」さらにはより細分化された「局あって省なし」になる。各省大臣も官僚と一緒になって自省の利益の最大化を図る傾向がある。 今年は省庁再編からちょうど20年が経つ。しかし、果たして「縦割りの弊害」は解消されたのか。筆者は懐疑的に見ている。