米大統領選、“最も現実的なシナリオ”は? 渡辺靖・慶應大教授に聞く
大接戦となっている米大統領選も、州ごとの結果が出そろってきた。俄然注目を集めるのは勝敗の行方だが、共和党のトランプ大統領、民主党のバイデン元副大統領はともに選挙人の過半数である270人に達しておらず、トランプ陣営は「選挙に不正があった」などとして複数の州で訴訟を起こしている。今後、どのような展開が待ち受けているのだろうか。アメリカ研究が専門の慶應義塾大学SFC教授、渡辺靖氏に聞いた。 【図解】3分でわかるトランプvs.バイデンの争点――次の4年を占う、70代の頂上決戦
想定以上の大接戦
――これまでの選挙戦をどう分析しますか。 全体的には事前の世論調査よりもトランプ大統領が善戦しています。その勢いは事前に思っていた以上で、改めてトランプの強さを実感しました。 特にフロリダ州は、各社の世論調査の平均では2ポイントほどバイデン候補が有利とされていましたが、実際には3ポイントの差をつけてトランプ大統領が勝っています。共和党有利と見られながらも激戦州と見られていたオハイオ州でも、世論調査ではトランプ大統領が2、3ポイントのリードをしていたものの、ふたを開けてみれば8%くらいトランプが差をつけて勝っています。 トランプ大統領自身も感染したコロナ禍の中、また人種問題が盛り上がりを見せる状況下でありながら大接戦になっている訳ですから、そういう意味でもトランプが強いなという印象を受けました。 ――投票率も高い水準です。 今回の選挙は特殊で、1つは党派対立がとても強い中での争いになったということで、共和党の人も民主党政権にだけはさせないという熱意が強かった。また、いわゆるマイノリティ、貧困層だけでなくて、高齢者も郵便投票をしており、その結果全体の投票率が上がったということではないでしょうか。 ――ここまで投票率が上がると予想していましたか。 郵便投票になれば、何時間も投票所で待つよりは非常に楽になるので、投票率は上がるとは言われていました。しかし、60%くらいかなと思ったら直前になると65%に達するかもということになり、最終的にはそれをも上回りました。これは凄いことで、その面に関して言えば、かなり民主主義が守られた、実現したという印象を受けます。