6000人の応募から、残ったのは18人だけ…アリババで日本事業のトップに上り詰めた日本人が明かす「グローバルに生き残るための思考法」
日本事業のトップまで上り詰めた
中国最大手ECなどを手掛ける、アリババグループ。1999年の創業からわずか15年で米国証券取引所に上場を果たした。IPOによる資金調達額は当時市場最高となる251億ドルを記録。ソフトウェア・ITサービス業としては時価総額世界12位、売上高4位を記録する世界に冠たるITテック企業だ。 そんなアリババグループで5年弱を過ごし、物流部門のグループ会社・菜鳥(ツァイニャオ)で日本事業のトップにまで上り詰めた日本人がいる。 現在はノーコードで簡単に本格的な自社の多言語多通貨対応のECサイトを作れるプラットフォームを運営するシンガポールの企業「SHOPLINE」の日本法人代表取締役を務める、大山廣貴さん(38)である。大山さんが見た、アリババとはいったいどのような企業なのか。話を聞いた。
「中国のことを知りたい理由」
大山さんの中国との出会いは前々職時代にさかのぼる。大山さんは早稲田大学理工学部を卒業すると、2010年、海運業界大手三社の一角である商船三井に入社した。着々と仕事をこなすなかで、衝撃的な事件が起こる。2014年4月19日、商船三井の鉄鉱石運搬船が中国当局に差し押さえられてしまったのだ。当時商船三井本社の経営企画部にいた大山さんも、当事者の一人だった。 「なぜ中国がこんなことをしたのか。そのロジックが知りたい。その一心でまずは中国語を勉強するようになったのです」(大山さん:以下発言箇所は大山さんのもの) 大山さんの興味関心は、ただ、中国語を学ぶだけで尽きることはなかった。実際に中国に渡り、急成長を遂げていた中国経済の原動力を学びたい、という思いが抑えられなくなってきたのだ。そんなとき、“中国にとんでもないMBAがある”という噂を耳にする。それが、現在アジアトップのMBAスクールである中欧国際工商学院(CEIBS)だった。 「同大学の世界ランキングを高めるために、世界中から優秀な教員や学生を集めている時期だったようです。授業も質が高くハード、休み時間には精根尽きた学生が、倒れこむようにして寝ている……なんて話も聞き、それに惹き付けられてしまって」 そこからの大山さんは早かった。実際に中国へ渡航、CEIBSの風土を肌で感じ、入学を決意する。 とはいえ、CEIBSの学費は2年間で約1000万円 と、おいそれと出せる金額ではない。当時商船三井には、社費留学制度のたぐいはなかった。しかし、大山さんは、持ち前の行動力でこの壁を突破する。大山さんは直属の役員等に直談判し、学費の一部補助をとりつけたのだ(会社との契約に沿って退職時に返金済み)。そして2016年、一人海を渡った。