米大統領選、“最も現実的なシナリオ”は? 渡辺靖・慶應大教授に聞く
――今後、最も現実的なシナリオはどういうものでしょうか。 バイデン元副大統領が270に到達して、とりあえず当選確実になる。一方で、トランプ陣営が訴訟を起こすと。その訴訟の中、具体的な(不正を立証するような)内容が出てくれば審議されるけれども、特に問題なしということで却下されるか、それともさらに連邦裁まで上げていくかということです。 州の裁判所、あるいは連邦裁で訴えが認められればいくつかの州ではもしかすると数え直しがあり得るかも知れません。しかし、(連邦)「最高裁」「最高裁」と言われますが、上告したとしても最高裁がそれを取り上げるかどうかは分かりません。そもそも選挙は基本的には州が行っているものなので、「州の判断を尊重する」という一文だけで返ってくる可能性もあるのです。よっぽど強い証拠、根拠がない限りは裁判に訴えても選挙結果をひっくり返したり、無効にしたりというのはちょっと無理筋かなと思います。 (各州が結果を確定させる)12月8日までに選挙人270人という数字が揺るがなければ、裁判の結果がどうであれバイデン氏が勝利することになります。そこまでに両候補ともに270に達していないという可能性もなくはないですが、これもトランプ大統領のこれまでの主張内容だけだと、大規模な数え直しをするとか、選挙戦の結果全体を無効にするということは厳しいのではないでしょうか。
――ということは、事前から決まっていたように12月8日に選挙人が決まり、同14日に選挙人に投票が行われ、来年1月6日に下院で決まると。 その可能性がいまのところ高いと思います。 もちろんこれから、「不正」を示す根拠が出てくれば別です。例えば、トランプ陣営は「立会人が30メートル以内に近付けず、その間に不正が行われたのではないか」という疑義をいくつかの州で呈しているようです。その訴えが一州でも通れば、ほかの州が同じ論拠を持ち出して選挙戦を揺るがそうとすることは起きてもおかしくない。その場合は話が若干ややこしくなるかなと思います。 バイデン陣営からすると、270ではなく、280とか290まで獲得し、1つや2つの州で仮に法廷闘争でひっくり返ったとしても270は揺るがないという状況を12月8日までに作っておけば実質決まりということです。