米大統領選、どう“決着”がつくのか 「民意とかけ離れたリーダー誕生」の可能性も 渡辺靖・慶應大教授に聞く
米大統領選では、各州と首都ワシントンに割り振られた選挙人のうち、過半数に当たる270人を獲得した候補者が“勝者”となる。ところが、混乱も予想される今回の選挙では、共和党のトランプ大統領、民主党のバイデン元副大統領のいずれも270に到達せず、「場合によっては民意とかけ離れたリーダーが誕生する可能性もある」とアメリカ研究が専門の慶應義塾大学SFC教授、渡辺靖氏は指摘する。どういうことだろうか? また、もつれた末、どのように選挙の決着がつくのだろうか? 渡辺教授に聞いた。 【図解】3分でわかるトランプvs.バイデンの争点――次の4年を占う、70代の頂上決戦
4年に一度行われる恒例の米大統領選。コロナ禍の今回は郵便投票を含めた期日前投票が9000万人分を大きく上回るとの報道もあり、これまでとは全く違う様相を呈している。期日前投票を集計しない限り勝負の行方は分からないが、州によってはその作業に数日を要することも見込まれ、いつ全51地域の結果が出そろうのか不透明だ。 その中、共和党候補で再選を目指すトランプ大統領は、郵便投票について「不正の温床だ」などと発言。法廷闘争に発展したり、連邦議会に判断を仰いだりと、もつれる可能性がある。“決着”はどうやってつくのだろうか。
「アメリカの民主主義、大丈夫?」に応える選挙
――今回の大統領選で注目する点はどこでしょうか? 大統領選は民主主義の象徴です。しかし、結果的にどっちが勝つにせよ、双方の支持者の間で結果を受け入れられないという人たちが衝突し、中には武器を持つ人が現れ流血に至るような事態になってしまうと、民主主義の象徴というより、いまのアメリカの分断を象徴するようなことになってしまいます。 少しアメリカを振り返ってみると、このコロナ対応でも躓(つまず)いて、かつ人種問題も再燃して、大統領候補同士の討論会も相手のマイクを切らないと成立しなくなってしまいました。選挙がもめて、結果的に衝突・暴行が起こるようになってくると「アメリカの民主主義って大丈夫?」という懸念がアメリカ国内外から出てくるでしょう。そうなってくると一番喜ぶのは中国やロシアです。 アメリカの選挙ではありますが、これまで自由主義に基づく世界をけん引してきたアメリカの威信を守れるかどうか。民主主義社会にとっても大きな、象徴的な選挙になると思いますし、個人的にはその点に興味があります。