「激戦州」「郵便投票」「勝利宣言」米大統領選のキーワード
アメリカ大統領選挙が11月3日に迫っています。共和党は現職のトランプ大統領、民主党はバイデン前副大統領が候補者で、最後の追い込みに奔走しています。 【図解】3分でわかるトランプvs.バイデンの争点――次の4年を占う、70代の頂上決戦 今回は新型コロナウイルスの感染拡大が収まらない中での選挙戦でもあり、いつもの大統領選挙とは異なる様相も呈しています。今後のアメリカ、引いては世界の命運を握ると言っても過言ではない大統領選挙の仕組みや注目点について、いくつかのキーワードを踏まえてアメリカ政治に詳しい上智大学の前嶋和弘教授が紐解きます。
◇ アメリカ大統領選挙を直前に迎え、大統領選挙の仕組みや今年の注目点などをまとめてみた。
「行政府の長」「国家元首」「最高司令官」である大統領
国内政治における大統領の憲法上の主な役割は、議会がつくった法律を運用する「行政府の長」である。ただ、日本を含む諸外国にとっては、大統領は「国家元首(ヘッド・オブ・ステート)」であり、外交の責任者である。また、世界最大の軍を備えている、軍事上の最高司令官(コマンダー・イン・チーフ)としての役割が非常に大きく見える。 大統領の任期は4年。最長2期。1992年当選のクリントン氏以降、再選して2期8年間務めた大統領がブッシュ(子)、オバマと3政権続いている。それ以前はレーガン大統領(80年当選、84年再選)をはさみ、前後のカーター氏(76年当選)、ブッシュ(父)氏(88年当選)は1期のみで再選は叶わなかった。再選を狙う現職大統領の場合、過去約4年間の業績が評価されるのは言うまでもない、トランプ大統領の場合も同じであり、トランプ氏の4年間の信任投票の色合いもある。
11月3日の「一般投票」12月14日の「選挙人投票」
大統領選挙は11月の「第1月曜日の翌日」に決められている。今回は11月3日が該当する。この日は「一般投票」と呼ばれ、18歳以上の国民(有権者)が投票するものの、実際には「選挙人」と呼ばれる有権者の代表を選ぶにとどまる「間接選挙」である。ここで選ばれた選挙人が翌月の12月14日にあらためて投票することで正式に大統領が決まるため、11月の一般投票で各候補者が争うのは、この「選挙人の数」である。 50州と首都ワシントンに割り当てられた選挙人の総数は538(上院議員総数100人、下院議員総数435人の総計と、ワシントン分の3を足した数)。その過半数である270の選挙人を獲得した候補が勝利となる。最も多い選挙人がカリフォルニア州の55人、最も少ないのがアラスカ州などの3人となっている。選挙人の数は各州選出の上院議員、下院議員の数と同じであり、下院は各州最低1で、あとは人口に合わせて配分されているため、選挙人が多い州は人口が多い(トップ3は、カリフォルニア=55、テキサス=38、フロリダ、ニューヨーク=29)。 ネブラスカ州とメーン州以外の州では、1票でも多い票数を得た候補者が、その州の選挙人全員を獲得できる「総取り」方式となっている。このため、全米での合計得票数は多いのに、選挙人の数で負ける場合もある。前回2016年の大統領選挙では、民主党のヒラリー・クリントン氏の得票数が約300万多かったにもかかわらず、選挙人の数で上回ったトランプ氏が大統領になっている。 ちなみに選挙人が12月の「選挙人投票」で投票する候補を変えることはあり得る。例えば2016年には7人が一般投票の結果と異なる投票を行っているが、それでも結果に影響するようなことは過去にもない。