米大統領選、“最も現実的なシナリオ”は? 渡辺靖・慶應大教授に聞く
トランプ陣営の思惑
――選挙戦当日、トランプ大統領は勝利宣言に近いものを出しました。 トランプ陣営としては、一般の投票では必ずしも勝ち目はないかも知れない、ということはある程度想定はしていたのでしょう。そのときに、いわゆる法廷闘争に持ち込むための前段階として、「選挙が公正に行われなかった」ということを印象付けて、法廷に持ち込むための布石を打ってきたのだろうと思います。 6日(米国時間の5日)の会見では、より1つ1つの州について言及し、自分が起こそうとしている法廷闘争というのがどれだけ根拠のあるものなのかということをより細かく伝えようとした場だったと思います。 ――トランプ陣営が法廷闘争に持ち込もうとしているのはなぜでしょう。 法廷闘争に持ち込むことにはいくつかの狙いがあります。1つはいわゆる劣勢の州の形勢を逆転する、オセロゲームで言うと黒を白に変えてしまうということです。もう1つは、野球に例えればアウトをセーフに変えるために審判に抗議するということです。 さらに、もう1つはそもそも試合自体がもめて、どっちが白なのか黒なのか、セーフかアウトか分からなかったということで、無効試合状況に持ち込み、接戦州での選挙結果を確定させない、という狙いがあると思います。 確定にならないと当然選挙人も割り当てられないので、そうすると州によっては選挙人がいないことになります。選挙人がいなければ、どちらの候補も270に達しない可能性があると。そうすると一般選挙では決着がつかなかったということになり、連邦議会に持ち込むと大逆転の可能性もある。そういう算段なのかなと思っています。
最も現実的なシナリオ
――法廷闘争に持ち込むことで時間を稼ぐのではないかとの見方も出ています。 長引かせるというのも目的の1つかも知れない。ただ、いきなり最高裁に持っていく訳ではなくて、まずは州の最高裁の判決が出ます。その内容を不服とする場合に連邦裁にいく可能性がありますが、連邦裁としてもこれはもう州に任せたとして、どこまで真剣に最高裁が扱うかは分かりません。一部州ではすでに訴えが退けられており、取り上げない可能性も十分あるということです。