米大統領選、“最も現実的なシナリオ”は? 渡辺靖・慶應大教授に聞く
“青い旋風”は吹かなかった
――大統領選と同時に上・下両院の議会選も行われました。事前予想では民主党が大統領と両院の過半数を制する「トリプル・ブルー」もあり得るとも言われましたが、両院の議員選ではそれほどの勢いはありませんでした。 トランプ大統領が押し返したということではないでしょうか。終盤にきて。昔は大統領選と議員選は分離していましたが、近年は特に上院と大統領選挙の情勢は州ごとに重なるようになってきています。トランプ大統領ないし共和党の強さというのが議会選挙にも見て取れたというのも重要なポイントだと思いますね。 トランプ大統領が実際は世論調査よりも強い数字、結果をはじき出したように議会選挙でも「青い旋風」というのですか、そういうのは吹かなかったという感じがします。 ――途中までは吹いていたのでしょうか。 その辺はまだ細かいデータがないと何とも言えません。世論調査がこれだけ読みが甘かったのかも知れないし、あるいは特にトランプ大統領がコロナから復活したあたりから、かなり積極的に激戦州をまわっていったということが功を奏したのかも知れません。 ただ、このトランプを支えた層というのはこれからも残り、影響を持ち続けるということでしょう。今回の選挙でそれが明確になったということです。米国内の分断状況はそう簡単には修復されないという気がします。 ■渡辺靖(わたなべ・やすし) 1967年生まれ。1997年ハーバード大学より博士号(社会人類学)取得、2005年より現職。主著に『アフター・アメリカ』(慶應義塾大学出版会、サントリー学芸賞受賞)、『アメリカのジレンマ』(NHK出版)、『沈まぬアメリカ』(新潮社)など。近著に「白人ナショナリズム」(中央公論新社)がある。