海外メディアは東京五輪の無観客開催をどう評価したか「正しい決断にホッ」「最新の挫折」「アスリートは失望」
ニューヨーク・タイムズ紙は、無観客開催を決断した理由を「新型コロナウイルス感染者の増加で、東京で新たな緊急事態宣言が出されることを受けたものだ」と説明。 同紙は、日本の新型コロナウイルスの感染者数は、米国や欧州に比べると少ないが、ワクチン接種の開始が遅れたことや、オーストラリアやシンガポールなどの厳しいロックダウンは行われていない現状をレポートした。 この日、決定した「緊急事態宣言」についても「東京の住民は、緊急事態宣言が出されるたびに、あまり深刻に捉えなくなっているようだ。2020年6月には誰もいなかった通りが、今ではバーやレストランが早く閉まる夕方までは、ほぼ通常通りの生活を送る人々で溢れている」と分析して東京の街の様子を描写。一部を除いては、ほとんど普通の生活を送っていることで、緊急事態宣言の効果について疑問を呈した。 また米ABC電子版では「東京オリンピックでの観戦禁止がアスリートのパフォーマンスに与える影響」を取り上げた。 スポーツ心理学の専門家などの見解から無観客の影響を受けやすい種目とそうでない種目がある可能性を分析。観客の声援に力を得られる選手は少なくないが、2012年のロンドン大会では、地元の選手にとっては、観客がいないほうが逆にプレッシャー軽減につながったというスポーツ心理学者からの報告があったという。 「選手たちはこれまで観客の歓声のなかでも、ベストのパフォーマンスができるようにトレーニングしてきたが、無観客の静寂にも対応できるように、コーチとともにイメージトレーニングする必要があるだろう」などと分析した。 米国の公共ラジオ放送NPRはホームページで「東京五輪は日本に政治的な影響を与えている」と、4日に行われた東京都議選との関連性について報道した。自民党が第1党となったものの苦戦が予想された都民ファーストの会の大健闘で自公両党での議席が過半数に届かなかったことを紹介し、「出口調査では、パンデミックやオリンピックに対する候補者のスタンスが、多くの回答者の投票内容に影響を与えたことが示唆されている」とした。東京五輪の無観客開催を主張していた都民ファーストが予想以上には議席を減らさなかったことの理由に、有権者の民意があったと分析しているようだ。 多摩大学ルール形成戦略研究所のグロッサーマン副所長の「日本政府は大会から何らかのパワーを得ようとしていた。秋の総選挙では、自民党がそれを投票に持ち込もうとしていた」という考察も紹介した。 当初は大会を有観客で盛り上げて成功に持ち込み、来る総選挙への与党の支持につなげようと考えていたが、新型コロナウイルスの感染状況と世論の逆風が影響して無観客決定につながったとも受け取れる分析結果。海外メディアは「無観客」決断の裏側を深読みしている。