「ISS全力で使う」大西さん意気込み 日本人3人目の船長就任も決定
月面着陸を機に「挑戦する社会情勢を」
アルテミス計画について、大西さん自身は意義や課題をどう認識しているか。「ものすごくシンプルに捉えている。人類はもう単純に、知らないことを知りたいといった探求心をずっとベースにして文明を進化させてきた生き物だ。どんどん宇宙に出て開拓していくのは、ごくシンプルな自然な流れ。月に戻り、さらにその先の火星を目指すのは、 本当にごく自然な進化の流れだ」
1969年、米アポロ11号の有人月面着陸では、日本社会を含め世界中が沸いたという。アルテミス計画では、日本人がいよいよ月面に立つ。アポロから半世紀以上経ったとはいえ疑いなく大きな話だが、関係者や宇宙ファン以外の関心は、今一つという観が否めない。大西さんにそう問いかけると、次のような力強い言葉が返ってきた。
「同じようなジレンマは私も確かに感じている。ただ米国内では、例えば先日の、米スペースX社の(次世代ロケット)スターシップの打ち上げでの機体回収は、ものすごく注目された。技術的困難へのチャレンジに人々が熱狂する余地は多分、まだ残っている。前(アポロ計画)より高度な月面探査を行っていくことに対し、注目がこれから必然的に集まってくるのでは。IT(情報技術)を生かした生中継で地上の人々と共有できれば、興味を喚起していける。新しいことに挑戦する姿勢を全世界が応援するという、すごくポジティブな情勢が作り出せたらと思う。アポロがまさにそうであったように。人類が挑戦し、科学技術を切り開く機運が高まる機会になってほしい」
大西さんは1975年、東京都生まれ。98年、東京大学工学部航空宇宙工学科卒業、全日空入社。副操縦士を経て2009年、JAXAの飛行士候補者に選ばれた。11年、飛行士に認定。16年7~10月にISSに約4カ月滞在し、米民間物資補給機「シグナス」6号機をロボットアームで捕捉する作業や船外活動の支援、きぼうの装置の充実に関する作業、多数の実験などを行った。20年、きぼうの運用管制を行うJAXAのフライトディレクタに認定され、地上から飛行士の活動を支えてきた。趣味はスキューバダイビング、音楽鑑賞、読書。