「ISS全力で使う」大西さん意気込み 日本人3人目の船長就任も決定
「2度目の甲子園」集大成目指す
大西さんはこの1年ほど、長期滞在に向けた訓練をほぼ順調に進めてきたという。先月末の記者会見やサイエンスポータルの取材で、今回の飛行を、観戦が好きだという高校野球の甲子園出場校に例えて表現してみせた。「1回目は春夏通じた初出場で、今回は2回目の出場。次にどんなイベントが待っているか、その練習の何に着目すべきなのか、本番でどう立ち振る舞うべきなのかといったイメージが、もう頭の中にある。短期間で自分(の訓練)を仕上げることができたのは、そこが一番大きな要因だったかと思う」
JAXAの飛行士は通例、長期滞在の度にスローガンのようなテーマを設定している。今回は「『きぼう』にできる、ぜんぶを。」とした。「きぼう」は、ISSを構成する日本実験棟。テーマの理由について大西さんは、米国が主導する国際月探査で、日本人2人の月面着陸も決まっている「アルテミス計画」に触れながら、次のように説明した。 「ISSがある地球低軌道の利用は民間主導に移ろうとしており、一方、NASA(米航空宇宙局)やJAXAといった国の組織は、遠く月や火星へと舵(かじ)を切ろうとしている。宇宙開発は過渡期にある。しかし私は前回の飛行で、ISSは非常にユニークな実験環境だと肌身に感じた。運用が終わる瞬間まで、全力で使い続けるべきだ。ISSは2030年までは運用されるが、そこで終わるかもしれない。後進の飛行士が育っていることも考えると、私がISSに行くのは多分これが最後。培ってきた経験、知見を生かし、集大成にしたい」
フライトディレクタの経験、大きな糧に
前回の飛行から既に8年が経っており、ISSの利用状況は変化している。象徴的なのは、飛行士がタブレット端末を携えて過ごすようになったことだという。また「きぼう」は、さらに活用度を高めるべき段階に来たようだ。「前回、『きぼう』はまだ“プラットフォーム化”の過程、いわば実証段階にあった。例えば実験装置の『静電浮遊炉』(材料を無重力で浮かせた状態で溶かすなどして調べる装置)について、私は初期の機能確認を担当した。いろいろな問題や不具合が発生したが、今では、ほぼフル稼働している。今回もう1回触れるのが、非常に楽しみだ」