「ISS全力で使う」大西さん意気込み 日本人3人目の船長就任も決定
飛行士は地上にいる間、宇宙で使われる機器や器具の開発への参加や、ISS滞在中の飛行士の支援、体力維持の訓練、各種の報告会などの活動を続ける。大西さんにとっては「きぼう」のフライトディレクタを務めてきた経験が、何よりの糧になったという。管制室でさまざまな指示を出す、運用管制の取りまとめ役だ。前回飛行の直後、この仕事をしたいと強く希望したという。 「宇宙で作業すると、地上の管制の人たちの動きをイメージしにくかった。管制と飛行士は車の両輪の関係で、うまく力を合わせて初めて、宇宙実験がスムーズに進む。実際にフライトディレクタを担当して得た経験が、今回の飛行で自分を助けてくれると思う」「地上で仕事をしていて『大丈夫、簡単そう』と思っても、飛行士との間で息が合わない時がある。逆に大変そうだったのに、息がぴったり合ってスムーズに進むこともある。そういった(後者の)経験が増えるように頑張りたい」
宇宙船の違いに興味津々。個人的に好きなのは…
前回の飛行でISSとの往復に使ったのは、1967年からマイナーチェンジを重ねて運用されている、伝統あるロシアのソユーズ宇宙船だった。これに対し、今回は最新鋭の米民間船「クルードラゴン」だ。全日空パイロット出身の大西さんは、両者の特徴の違いに、大いに興味を引かれたという。会見では「同じ宇宙船というくくりにはなるものの、個性が全然違う」と語った。
「クルードラゴンは完全自動化し、地上からの遠隔操作が高度に発達している。例えば自動車にはマニュアル車とオートマ車があり、好みは人それぞれ。同様に個人的な好みで言うと、ソユーズの方が面白かった。飛行士が手動で何かをやる余地が大きく、パイロットの観点で楽しかったから。ただテクノロジーの進化としては、クルードラゴンのような機体が登場したのは必然。今後、プロの飛行士でなくても最低限の訓練で宇宙に行ける時代が来る中で、時代の流れなのだろう」
前回は機会がなかった、船外活動への意欲もみせた。「船外活動の経験を持っているかどうかは(アルテミス計画で月面に立つ飛行士を選ぶにあたり)一つの大きな要素になると思う。そういった意味で、今回の長期滞在中に自分ができれば、非常にうれしい。ただし、船外活動は国際間の調整で決まるのであり、大きな期待は抱かずにいたい」と、慎重に言葉を選んだ。なお同期の飛行士、油井亀美也(ゆい・きみや)さん(54)、金井宣茂(のりしげ)さん(48)の3人の中では、金井さんだけが船外活動経験者だ。