収益目的の「切り抜き動画」に違法性は?──2024年主要選挙とメディア #SNSの功罪
テレビの視聴時間をネットの利用時間が超えた 「衆院選の切り抜きは動画全体の3割」選挙ドットコム・高畑卓さん、伊藤由佳莉さん
国政から地方政治まで選挙情報に特化したウェブメディア「選挙ドットコム」。同メディアを運営し、選挙に関する傾向やデータなどを分析、中立の立場で情報提供を行うイチニ株式会社の代表・高畑卓さんと「選挙ドットコム」編集部の伊藤由佳莉さんに話を聞いた。 高畑さんは2024年に実施された3つ選挙について、切り抜き動画の影響は大きかったと語る。 「まず7月の都知事選。選挙期間中に発信された選挙関連の動画の総再生数は約4億7000万回でした。そのうち石丸さんだけを取り上げた動画は、じつに4割以上、2億回以上の視聴がありました。その動画を分析してみると、6割を占めていたのが切り抜き動画でした」
「10月の衆院選での全再生数は約2億8000万回です。動画の内訳を調べると、政党が発信したものは33.4%、候補者が発信したものは7.7%で、残りの58.9%は第三者による発信でした。大まかな分析では、そのうちの約半分、つまり全体の30%くらいが切り抜き動画でした」 「そして11月の兵庫県知事選。このときの動画再生は1億8600万回。衆院選の約3分の2ですから相当多いです。ところが、その中身を見ると、全体のうち約3割、3700万回が立花孝志さん関連の切り抜き動画でした。この立花さんの切り抜き動画が斎藤元彦さんの勝利に寄与したのは間違いないでしょう」 「このように、2024年の選挙では切り抜き動画が大きな存在感を示しました。ただ、これは突然こうなったのではなく、この数年でそうした土壌ができてきて、2024年になって爆発したとみるべきです」 転換点は2020年と高畑さんは言う。コロナ禍となり、在宅の時間が増えたことで一気にメディアシフトが起きた。全年代での調査でテレビの視聴時間をネットの利用時間が超えた。同じ頃、ひろゆき氏の切り抜き動画が生まれ、「切り抜き職人」が現れた。そうしたなか、切り抜き動画を選挙に使う動きが出てきたという。