恐竜王国・福井の最新研究事情【後編】幅広いキャリアパスと科学の窓口に~新学部誕生に込めた真の狙い(福井県立大学・今井拓哉さん)
2024年8月、福井県立大学への「恐竜学部」新設が文部科学大臣により認可された。「恐竜」の名を冠した学部の設置は、もちろん国内初のこと。日本で最も多くの新種恐竜が発見された地ならではの挑戦だが、大胆なネーミングの裏にある真の狙いは何なのか。先に行われた総合型選抜では出願倍率が10倍を超えるなど高い注目を集める中で、来年4月の誕生に向けて準備にあたる今井拓哉さん(恐竜学研究所・准教授)に聞いた。
恐竜好きの受け皿がなかった
―恐竜学部の新設に至った経緯や狙いを教えてください。
福井県は世界的に価値の高い恐竜化石の宝庫でありながら、研究の道を志す恐竜好きの若者にとって受け皿がありませんでした。県立の恐竜博物館はあくまでも展示にフォーカスした施設であり、研究人材の育成には限界があります。北陸全体に目を向けても、古生物学を学べる大学の研究室はいずれも無脊椎動物を主な対象としており、恐竜を含む脊椎動物の研究には必ずしも最適とはいえません。
脊椎動物を中心に古生物学を学ぶには、国内では北海道や関東などの他地域を目指す必要があり、人材が流出してしまうことになります。また、せっかく遠方の大学へ行ったとしても、恐竜を研究対象にすることはやはり難しく、「古生物」という広い枠の中で学ぶ必要がありました。
本学では2013年に恐竜学研究所が発足し、2018年から大学院生への教育が本格的にスタートしていましたが、学部の新設により学士課程まで裾野が広がることになります。来春からは恐竜研究に特化した学部として、地域の豊富な資源と志ある若者を結び付け、研究のさらなる推進と人材育成の担い手になっていきたいと考えています。
学びは博物館と連携、フィールド実践、デジタル活用
―恐竜学部ではどのようなことを学べるのでしょうか。
「オール福井、すべてが学びの場」をコンセプトに、恐竜研究の基礎となる地球科学や古生物学、地質学を中心に学ぶことができます。従来にない特色としては、主に人的・物的な側面での恐竜博物館との連携、新種恐竜の発掘現場などでのフィールド科学の実践、そしてデジタル技術を活用した新たな研究手法の3つが挙げられます。