恐竜王国・福井の最新研究事情【後編】幅広いキャリアパスと科学の窓口に~新学部誕生に込めた真の狙い(福井県立大学・今井拓哉さん)
複合的な知識生かして地域の課題も解決
―初年度の募集は30人を予定しています。研究者や学芸員などのポスト数を考えると、多い数字のようにも感じます。
大学や博物館における恐竜関連のポストを考えると、卒業生全員が将来的にそれらを得るのは難しいと思っています。そうなると一見、供給過多に感じられるかもしれませんが、我々は全員が恐竜研究の道に進むとは考えていません。
そもそも恐竜の研究には、複合的な知識が求められます。実際に私たち研究者も、古生物学はもちろんのこと(現生の)生物学、地質学、環境学、土木学、コンピューターサイエンスなどの幅広い知識を総動員しながら研究に臨んでいます。恐竜学部のカリキュラムも、当然それらの知識を得るためのものとなるでしょう。恐竜研究のキャリアパスのみに限定せず、力を発揮できるフィールドを探してほしいと考えています。
―具体的にはどのようなキャリアパスを想定されているのでしょうか。
恐竜へ直接的に関わる分野であれば、メディアや出版、教育関連の職業などですね。また、近年の恐竜研究はデジタル化が進んでいますので、3Dやアート関連の技術者やクリエイターなどの道にもつながるかもしれません。 それ以外にも、防災や地質コンサルティングなどの職業は、恐竜学部で行われる地学の学びを存分に生かせると考えています。特に福井県の場合は、原子力発電所の数が最も多い自治体でもありますので。地学の知見で地域課題解決に貢献できる人材を輩出することも、目標の1つです。
コミュニケーション力と体力は必要
―恐竜学部を志望する学生にどのようなことを期待していますか。
意外に思われるかもしれませんが、恐竜研究者には化学や数学が苦手な人も多いんですよ。ですので、理系科目の得意不得意や専門知識の有無を過度に気にせず、好奇心旺盛であってほしいと思います。
恐竜研究は数学的に分かりやすく答えが出せる学問ではありません。さまざまなことを推定しながら研究を進めていく必要があるので、分からないことを分からないなりに楽しむ心を持ってもらいたいです。