恐竜王国・福井の最新研究事情【後編】幅広いキャリアパスと科学の窓口に~新学部誕生に込めた真の狙い(福井県立大学・今井拓哉さん)
恐竜学部の下には恐竜・地質学科を置き、さらに2つのコースを設けます。「恐竜・古生物コース」はオーソドックスな古生物学を学ぶコースですが、一番の売りとなるのはやはり恐竜の化石です。
一般的な古生物学の教育では、アンモナイトや貝類など日本で多く発掘される化石が教材の中心になることがほとんどなので、この点は圧倒的な強みとなりますね。デジタル古生物学にも力を入れているので、CTやレーザースキャナーなどデジタル機器の使い方を学び、恐竜など古生物への応用を深めていくことになります。
もう1つの「地質・古環境コース」は、いわゆるフィールド古生物学と呼ばれるもの。化石そのものだけではなく、化石を手掛かりとして過去の環境やその変化を調べる分野です。地層や断層を調べる中で、測量機器やドローンなどの使い方も学ぶことができます。
産学連携で観光振興の追い風に
―県の機関として、地域貢献への期待も高いのでしょうか。
恐竜は福井県のトップブランドの1つです。県内の恐竜好きの受け皿になることはもちろん大事ですが、県外からの学生が増えることへの期待は当然ありますし、勝山市も最大で毎月2万5000円の学生向け補助金制度を設けるなど住環境整備に尽力してくれています。
同時に、観光振興に貢献していくことにも期待がかけられています。博物館では商業的に手を付けにくい部分があるので、産学連携のような形で大学がこの部分を担っていきたいですね。実は過去にも、本学と同じ永平寺町の蔵元である吉田酒造さん、茨城県つくば市のベンチャー企業・地球科学可視化技術研究所と連携し、日本酒の「恐竜ラベル」をデザインしたことがあります。
そうした活動を盛んにするため、2021年には福井新聞社と共同で大学発ベンチャー「恐竜総研」も設立しました。学説に基づいた商品開発など、研究成果をそのまま産業につなげることを目指しています。これらの取り組みや経験を生かしつつ、恐竜学部の新設を観光振興の追い風にしていきたいですね。