シャチ、37年ぶりに「サケの帽子」をかぶる
シャチ界のトレンドファッション、再び。 人間でも昔流行したファッションがいきなり復活したりしますよね。太平洋岸北西部のワシントン州沖では、80年代にシャチのあいだで流行した、死んだサケを帽子のように頭に乗せている姿をウェールウォッチャーが目撃して話題になっていますよ! シャチ、奥が深い。
80年代に流行ったシャチファッション
このサケ帽子が流行ったのは、1987年のこと。まだ生まれていなかった読者もいるのでは? 当時、ワシントン州シアトル沿岸のピュジェット湾で、死んだサケを鼻先に乗っけたメスのシャチが目撃されたそうです。 Atlas Obscuraによれば、この「サケ帽子」はメスの群れ全体に広がって、その後6週間でその地域に生息する3つの群れのすべての個体がまねをしたといいます。でも、飽きるのも早かったらしく、熱はすぐに冷めちゃったようです。
あれから37年。サケ帽子、復活
今回目撃された、サケのアクセントを身に着けたオシャレなシャチは、ピュジェット湾のJ-ポッドに属する「J27ブラックベリー」と呼ばれるオスの個体です。 J27ブラックベリーが生臭そうな帽子を乗せた姿が目撃されたのは10月25日のこと。当日に撮影された写真(トップ画像)には、シャチの背中に乗っているサケの尻尾あたりが海面から見えています。 Orca Conservancyによると、J27ブラックベリーは1991年生まれで、「最も人気の高いサザンレジデントシャチの1頭」とされ、妹のJ31、弟のJ39と仲良し。このきょうだいは、2008年に母シャチのJ11を失っています。 待って。J27ブラックベリー、サケ帽子がはやったときまだ生まれてないやん。 Orca Networkのプログラムマネージャーであるステファニー・レイモンド氏は、米Gizmodoへのメールで以下のように述べています。 シャチの社会に流行があるのはたしかですね。1980年代後半に、このシャチのグループが死んだサケを頭に『かぶる』という短期間の流行を楽しむ様子が観察されています。そして最近、成体のオスが同じことをしているのを捉えた1枚の写真がきっかけになって、レトロな流行が復活?とSNSやメディアの注目を集めています。 そしてさらに、 もしも地元のシャチ愛好家の間で有名なJ27ブラックベリーが見せた「サケ帽子姿」が本当に流行の復活なのだとしたら、かつての流行と同じであることを裏付けるのに十分な記録が残っているはずです。 と付け加えています。 海洋保護団体ORCAによると、頭に海藻を乗せているザトウクジラは時折目撃されるそうですが、たぶん気持ちいいからやっているんだろうとのこと。 でも、ザトウクジラが海藻を食べないのに対して、シャチはサケを食べます。自分が食べるものを頭に乗せるのは、たしかに変といえば変。人間がサケの塩焼きを頭に乗せているようなもの…かも? それにしても、最近はシャチがよくニュースになりますね。2023年には船を襲い、今年はヨットを転覆させました。また、チリ沖でイルカを狩る姿も目撃され、南アフリカ沖では1頭のシャチが2分でホホジロザメを補食する姿が確認されています。さらに、メキシコの太平洋岸ではシャチの群れが世界最大の魚であるジンベエザメの狩り方を学んだようです。 J27ブラックベリーが生まれたのは、前回サケ帽子がはやった4年後。いったいどうやってサケ帽子を知って取り入れたのか、謎は深まるばかり。昔の流行が再び目撃されたことについて、ある研究者がNew Scientistsに語ったところによると、前回の流行時にサケ帽子をエンジョイしたシャチたちが関わっている可能性もあるのだとか。群れの年長組に教えてもらったと考えるほうが自然かも? でもひょっとすると、J27ブラックベリーはトレンドをフォローするタイプじゃなく、自分で思いついてサケ帽子をかぶったトレンドセッターなのかもしれませんよ。
Kenji P. Miyajima