奄美大島のマングース根絶、多難な道のりと外来生物のこれから
マングースの生存は、2018年度に捕獲された1頭を最後に確認されていません。その後も約6年間、活動を続けながらゼロを積み上げた結果、根絶確率が十分に高まったと判断し根絶宣言に至りました。
―生存数がゼロになったとの判断が社会的になされて、根絶宣言が出されたわけですね。一方で、科学的に見ると確率がゼロになったわけではありません。
ゼロの証明は、科学として根本的に難しいテーマですね。計算上はゼロにはなり得ませんから。その上で「残存している可能性が十分に低い状態」であることをどのように判断するかの手法はさまざま検討されていますが、面積が大きくなればなるほど難しい。世界にはマングースの根絶事例がいくつかあるものの、奄美大島は特筆して大きいですし。くまなく捕獲すること自体難しいですが、評価の難易度も高くなります。それらを理由に、検討会でも「根絶宣言をそもそも出すべきか」から議論をしました。
―それでも根絶宣言を出すに至りました。
理由はいくつかありますが、根絶宣言によって区切りを付ける意義が大きかったように思います。成果をしっかりと発信する必要がありましたし、奄美大島のマングース防除事業に充てられていた環境省の予算を、他の外来生物防除事業に回すことも考えなければなりません。根絶宣言をする・しないの選択肢があるときに、どちらの方が期待される便益が大きいかによって判断するのが合理的なのだろうと感じましたね。
宣言を出すにあたり、科学的には2つの評価手法を根拠として用いました。エリアにおける根絶確率を算出するHBM(Harvest-Based Model)と、個体数をベースに根絶確率を算出するREA(Rapid Eradication Assessment)です。今回HBMでは、1979年に30頭が放たれ、ピークの2000年に1万頭まで増え、そして防除事業の進捗により根絶されるまでの推移をシミュレーションしました。そこで導き出されたパラメーターは、REAにも使われています。 2024年3月までに得られたデータをもとに、HBMで99.7%、REAで98.9%の根絶確率がそれぞれ示されたことから、検討会で十分な議論を経て「根絶した」と評価しました。