奄美大島のマングース根絶、多難な道のりと外来生物のこれから
最終的には2018年に捕殺式のわなにかかった1頭が、奄美大島で確認された最後のマングースとなっています。その後もわなやカメラ、探索犬によるモニタリングを6年間続け、そこから根絶確率を慎重に計算し今回の根絶宣言に至りました。
―世界で類を見ない成功を実現した今の気持ちを教えてください。
根絶は不可能と言われ続け、常識的に考えれば無謀なチャレンジでしたが、きちんとやれば実現できることを証明できて本当に良かった。各地・各国でも目標を立てて外来種対策に取り組んでいると思いますので、貴重な実験結果になると考えています。
ただ、他の外来種にも応用できるかといったら、簡単ではないだろうという気持ちもあります。対象種ごとの生態を考慮した対策がやはり必要でしょう。それでも、人が現場でどう動けば良いのか、それにどれぐらいのコストと労力がかかるのか、そういった知見は役立てられていくと思っています。
―今後の課題は。
マングースの防除が進むにつれ、在来生物の数が回復している実感があります。ただ回復によって、在来種が交通事故に遭うケースも増えています。加えて、アマミノクロウサギによる農業被害なども増加しました。今後は在来種の保護に努めつつも、畑に入り込まないよう対策を施すなど、在来種との棲み分けを含めて共生のあり方をきちんと考えていかなければなりません。
最後に問題提起として。マングースバスターズや探索犬は、訓練を積んだ外来種対策のプロたちです。にもかかわらず、防除事業が終わって給料を支払う財源がなくなったからといって解散してしまうのは、少し違う気がしています。県や市町村にも協力を求めて、1人でも多くのスタッフがプロとして次のステップに進めるような仕組みを考えていきたいですね。
プロフィール
阿部愼太郎(あべ・しんたろう) 環境省 奄美群島国立公園管理事務所 国立公園保護管理企画官 1964年静岡県生まれ。日本獣医畜産大学(現日本獣医生命科学大学)修士課程修了。獣医学修士、獣医師。99年に環境庁へ。2001~07年奄美野生生物保護センターの自然保護官としてマングース防除の初期に携わる。20年奄美群島国立公園管理事務所所長、24年より現職。