「遊びながら」ダービー勝利の無敗2冠馬コントレイルは父ディープインパクトに並ぶスーパースターホースになれるのか?
競馬の祭典「第87回日本ダービー」(2400m芝、G1)は31日、無観客の東京競馬場で行われ、単勝1.4倍の1番人気に支持された皐月賞馬コントレイルが2分24秒1で優勝、1着賞金2億円を獲得した。無敗での2冠達成は、父ディープインパクト以来15年ぶり7頭目の快挙。秋の菊花賞では、父に並ぶ無敗3冠を目指す予定だが、コントレイルは偉大なる父に並ぶスーパースターホースになることができるのだろうか。なお2着にはサリオス、3着にはヴェルトライゼンデが入り、馬連5-12が270円、馬単5-12が350円と配当的には手堅く収まった(成績、配当はJRAの公式発表で確認下さい)。
最後の直線で起きた異変
最後の直線。残り300mで福永祐一騎手の手が動いた。 「コントレイル」の日本語訳「飛行機雲」のようにジェット加速。前にいたマイラプソディ、コルテジア、ディープボンドに並ぶと、一気に抜き去り、先頭に立った。 実は、この時、43歳の福永騎手は、異変を感じた。 「遊んじゃうんですよね、だから追い出し(鞭を入れること)を待っていた。抜けてからも緩められなかったのは、まだまだ集中しきれていないから」 前に馬がいなくなり競馬用語で「ソラを使う」という集中力の途切れる現象が起きたのだ。だが、福永騎手は冷静に鞭を入れるタイミングを見極める。その状態で、後ろから追いかけてきた皐月賞2着馬のサリオスを置き去りにした。3馬身差。皐月賞での半馬身差勝利から、さらに力の差を見せつけたのである。 「逆に考えれば、遊びながらダービーで勝ったのですから相当優秀な馬だと思う。底が見えないポテンシャルの高さは楽しみしかない」 レース後、福永騎手は、そう言って相棒を称えた。 2着に敗れたサリオスのダミアン・レーン騎手は、「馬はリラックスしていたし、リズム良く運べた。ラストもいい反応で素晴らしい脚を使っている。しかし、1頭強い馬がいた」と完敗を認めた。 戦略通りのパーフェクト騎乗だった。 「2番手の後ろに入れ、進路がスムーズだったのが大きかった」 父のディープインパクトのダービーと同じ3枠5番からのスタート。15年前、ディープインパクトは、そこで大きく出遅れて一瞬ヒヤリとさせたが、コントレイルは、抜群の飛び出しを見せて、序盤は3番手のインをがっちりとキープした。 周囲には、牧場時代をともに過ごした同じノースヒルズ生産のコルテジアと、ディープボンドがまるで、主役を守るかのように”伴走”した。これも陣営の作戦だったとすれば鮮やかというしかない。 前半1000mの通過タイムは、逃げたウインカーネリアンがうまくペースを落とし61秒7のスローペース。しかし、この流れにも柔軟に対応した。折り合いに苦労する馬がいる中、精神面が成長したコントレイルは平常心を保ったままだ。