「遊びながら」ダービー勝利の無敗2冠馬コントレイルは父ディープインパクトに並ぶスーパースターホースになれるのか?
先に仕掛けたのは、”策士”横山典弘騎手のマイラプソディである。14番手から一気に先頭へ。しかし、そんな揺さぶりにも一昨年、ダービージョッキーの称号を手にしている福永騎手は、「想定内」と、全く慌てることはなかった。 「一度も勝利を経験したことがないのと一度経験をしているのでは心境、心持ちが違った。大きなレースでたくさん経験したことが生きた。ペースが流れなかったので、ああいうこともあるだろうと。”ノリさん(横山騎手)が来たな”と。自分の中では冷静だった」 ダービー騎乗は21度目だが、「無敗馬で挑むダービーは僕自身も初めての経験」というプレッシャーはあった。だが、2年前のダービーをワグネリアンで制したという実績が自信につながっていた。そして何よりコントレイルの能力を信じ切っていた。 そのまま好リズムを保ったまま直線に向かうと、不利を受けないように馬場の真ん中に持ち出した。父のディープインパクトは大外からの強襲だったが、盤石の構えで追い出しを開始。そこから上がり3ハロン最速の34秒0の豪脚を繰り出して2017年に生まれたサラブレッド7262頭の頂点に立った。 その圧勝劇や走りは、どこか偉大な父に重なった。 北海道新冠郡新冠町にある「ノースヒルズ」は、2013年のキズナ、2014年のワンアンドオンリーと2度ダービー馬を出している名門牧場だが、毎年のように施設の改良を加えており、2017年秋には北海道の日高町に中期育成牧場「ノースヒルズ清畠」を開場。育成部門を強化した。コントレイルの世代は、ここで育成期を過ごした1期生。そこから重賞馬が続々と飛び出し、オークス、ダービーともに3頭出しとして成果が出ている。 矢作芳人調教師にとっては2012年のディープブリランテ以来となる2度目の制覇だが、2019年以降、リスグラシューなど、実にG17勝と、快進撃を続けている。馬の性格と能力に加えコンディションを見抜く力は「まるで馬と会話ができる」ようである。 その矢作調教師もコントレイルに無限の可能性を感じ取っていた。 「ダービーでの単勝1倍は初めての経験でしたし、プレッシャーは相当でした。しかし、パドックを見て、究極に仕上がっていると思いましたし、精神面でも落ち着きがあった。現状、課題が見つかりません」