小保方晴子氏が手記出版 混濁する真相 「STAPあります」は撤回せず
「研究不正」について述べられていないこと
以上は「再現性の有無」についてのことですが、「研究不正の有無」はまったく別の話です。 理化学研究所は2014年3月に2カ所、同年12月に2点、合計4カ所の研究不正を認定しました。小保方氏は前者2点については本書で言い訳めいたことを書いていますが、後者2点については何も述べていません。 その後者、2014年12月25日にまとめられた「研究論文に関する調査報告」では、複数の図表について、委員たちが疑問を抱き、小保方氏に図表のもとになった「オリジナルデータ(生データ)」を提出するよう求めたが、小保方氏は提出しなかった、とあります。普通に考えると、オリジナルデータを示すことができないならば、その図表はでっちあげられたもの、すなわち「捏造」だと判断せざるを得ません。 しかし委員会は「不適切な操作が行なわれたかどうかの確認」はできなかったため、「研究不正とは認められない」と判断してしまっています。小保方氏は、研究不正とみなされなかったためか、一般読者はほとんど知らないためか、この件には何も触れていません(『ネイチャー』に求められて「生データ」すべてを同誌に提出したという記述はあります(150頁))。 また、2014年6月、理研の研究者である遠藤高帆氏や若山氏らの調査結果で、STAP細胞とされたものがES細胞である可能性が高いことがわかってきたことについて、小保方氏は「連携して行なわれた発表でないにもかかわらず、私がES細胞を混入させたというストーリーに収束するように感じた」と書いています(202頁)。 2014年12月の「研究論文に関する調査報告」でも同様の結果が出たのですが、ES細胞の混入が意図的なのか非意図的(過失)なのか、意図的だとしたら誰が混入したのか、そしてその理由については、結論に至っていません(なおこの結果は後に、やはり『ネイチャー』の「BRIEF COMMUNICATIONS ARISING」で科学コミュニティに対して公表されています(Nature 525(7570):E4-5, 2015))。遠藤氏も若山氏も、小保方氏がES細胞を意図的に混入したとは述べていないはずです。