3位浮上の中日は8年ぶりのAクラス入りを果たせるのか
二死からの3連打で浜口に襲い掛かった初回には、渡辺が四球でつなぎ、木下の2点タイムリーが生まれた。溝脇は得点に絡めなかったが、2安打。7回二死からレフトへの当たりで二塁を狙って、佐野の好返球に阻まれたが「アウトになったが、何とか次の塁を積極的に狙っていく(という姿勢)。しょうがない」と与田監督は評価した。 ビッグイニングとなった2回には一死一塁から京田が三塁線へセーフティバント。宮崎と浜口は、ファウルになると捕球を見送ったが、打球はラインの内側でピタリと止まった。 サインではなかったという。 「自分からやっている。京田のいろいろ考えたプレー。(チームとして)機動力を使うという部分で練習していることを試合で徐々に試せるようになってきた」と与田監督。 京田の打率は、規定打席に到達した打者の中で最下位の.231。「セリーグで最も打てない男」である京田を与田監督が我慢して起用している理由は、守備力もあるが、こういう姿勢もあるのだろう。 そして中日の9、10月反抗の代名詞でもある”キノタク”こと木下拓がまた存在感を示した。 「覚えていないんですが、(横浜DeNAは)何点あっても足りない打線。そういうチームなので少ないチャンスで1本出て良かった」 9、10月の打率が.346。与田竜が固定できずに困っていた正捕手の座を射止めつつある。今季は中日で最多の47試合でスタメンマスクを被っている。 覚醒理由を聞かれて、まともに答えなかったが、2つの理由が考えられる。 ひとつは超積極打法である。この日も3号3ランは初球のカーブ。カウント別の打率を見ていると2-0が.750、0-1が.455と早い仕掛けでの成功が目立つ。カウント負けする前にタイミングの合うボールを全部振りにいくという姿勢である。
また2-2の打率も.364ある。2-2のカウントは最もバッテリーの配球との駆け引きが結果に出るカウントだと言われている。読みである。追い込まれる前に勝負している反面、そこまでの配球からの読みが冴えているとも取れる。これも捕手ゆえの裏返しの傾向だろう。亡くなった野村克也さんがよく言っていた、「捕手は頭で打つ。逆の立場に立って考えてみろ」である。 そして、もうひとつの要因は、その自然流スイングにある。ローボールヒッターで半速球の変化球に対応できるのが木下の特徴だが、力みなくまるで流れるように強くコンタクトできる。この日は、初回のレフトへの2点タイムリーがチェンジアップ、2回の3ランはカーブを捉えたが、力まず投手に波長を合わせてバットが出ていた。どこかで極意をつかんのだろう。与田監督も、「今非常に調子がいい。体の疲れがあると思うが、バッティングの状態はかなり上がってきている」と評価している。 盗塁阻止率も.457で、阪神の梅野の.389、横浜DeNAの戸柱の.388を上回ってリーグトップ。ブロッキング技術に課題は残すが、捕手としての信頼も徐々に勝ち取りつつある。中日がAクラス入りを果たすためのポイントとされていた正捕手固定の課題が解消しつつある。 与田監督が、先発転向させたことがはまっている福谷は、この日も、しっかりとゲームを作った。4失点したが、ボールに力があり、無駄な四死球がない。3連勝。勝つことで、自信と余裕が生まれつつあり立派なローテーの軸となっている。 今の中日の勢いを象徴するような勝ちゲームだったが、課題も見えた。 ベンチ采配の甘さとミスだ。