東京の23区とは違う? 大阪都構想の特別区
大阪市を廃止し、4つの特別区に再編する「大阪都構想」の是非を問う住民投票が告示された。これから11月1日の投票日に向け、賛否両論さまざまな意見が交わされよう。賛成多数となれば、1956年にできた政令指定都市の1つが廃止され、これまで東京のみだった「特別区」が他都市にも創設されることになる。これは、わが国自治制度のあり方に大きな一石を投ずることになる。それだけに大阪市民はもとより、多くの人が大阪都構想の中身を十分に理解しておく必要があるだろう。(元都庁職員の行政学者・佐々木信夫中央大名誉教授)
「特別区」と「行政区」はどう違うのか?
まず政令指定都市に置かれる「行政区」と「特別区」はどう違うのか。 大阪市には現在、24の行政区がある。これはいわば住民の利便性を確保するために市が置いた出張所(支所)だ。 他方、「区」という名称は同じだが、特別区は政令指定都市や市町村と同じく、公選によって区長・議会議員が決められる2元代表制の仕組みからなる基礎自治体で、(1)条例制定権(2)課税権(3)財産権――などを有する(図参照)。東京23区や今回の大阪都構想で想定している4つの区はこれにあたる。 以上を踏まえ政令指定都市から特別区へ移行しようとする大阪の改革をみてみよう。
すれ違う論争
大阪維新の会を中心とする都構想推進派が「市と大阪府による2重行政を解消し、大阪を成長させる」と訴えるのに対し、自民府連など反対派は「権限を府に移すのは地方自治に逆行し、住民サービスの低下になる」と強調している。 これは本当に論点の噛み合った論争なのか。 前者の「広域行政は府に統合、基礎行政は特別区に委ねる」「都区間に財政調整の仕組みをつくり特別区間の不均衡を是正」というのは「都区制度」への移行を焦点としたものであるのに対し、後者の「市の権限が減る」「4つに分けるとサービスが低下」というのは「特別区」移行のみに着目した議論となっている。 当然ながら、住民にとっては広域行政の効率化も、足元の住民サービスも大事だ。だが、こうした次元の違う、すれ違い論争、水掛け論争ばかりでは住民が戸惑うし、住民投票を行っても民意が正確に反映されたかどうか分からない。筆者は、特に「特別区」という制度への理解を深める必要があると感じる。 この構想は「広域自治体の都(府)に広域行政の司令塔を一本化し、身近な基礎行政は公選区長と議会を置く基礎自治体の特別区に委ねる」という都区制度への移行を柱とするものだ。これがいま東京で行われている「都」と「特別区」の関係であり、大阪の都区制度もそれをベースにしている。 ただ、大阪都構想が目指すのは現在の東京都と23区の関係の丸写しではない。大阪特別区は権限、財源とも手厚い。まず東京の特別区の成り立ちを振り返りながらみてみよう。