大阪都構想の否決は高齢者のせい? 選挙における世代間対立をどうみるか
「大阪都構想」の住民投票では、1万741票差で都構想への反対が賛成を上回り、同市は政令指定市として存続することになった。橋下徹市長は今年12月の任期満了で政治家を辞める考えを表明した。これを受けて、ネット上では、「70代以上の高齢者の反対投票によって結果が左右された」として、高齢者の意向によって民意がねじ曲げられた「シルバーデモクラシー」だとの批判がでている。その一方で、「若い世代の人口は高齢者よりも多いので、批判はあたらない」という見方もある。いったい、今回の住民投票で何が起きたのか。選挙における世代間対立があったとしても、それをどう考えればいいのか。政治学者の品田裕(しなだ・ゆたか)神戸大学大学院教授に寄稿してもらった。 -------------- 大阪市の住民投票が終わった。投票率は約67%と極めて高く、投票総数は140万を越した。結果は、都構想反対が賛成を上回った。その差は、ごく僅か、有効投票の1%にも満たない約1万票だった。大激戦だった訳であるが、同時に、もう一つ、別の特徴が指摘されている。有力マスコミ各社の出口調査によると、50歳代以下の層では賛成派が多かったのに対し、70歳代以上は逆に反対派が優勢だった。年齢と投票方向(「賛成」ー「反対」)が見事に連動していたのである。 この点をとらえて、「シルバーデモクラシー」を懸念する議論が出ているようだ。「高齢者が次世代の意思を押し潰した」、「選挙結果を左右した」という指摘だ。社会の高齢化が著しく進行し、年金や介護に要する巨額の社会保障費が財政にのしかかっている昨今、「シルバーデモクラシー」は、たびたび議論の的となってきた。今回の住民投票では、非常にわかりやすい形で、この問題が出てきたのである。 しかし、「シルバーデモクラシー」とは何か、よく整理して考える必要がある。議論の趣旨は、現在の日本では、高齢者が多すぎて、その意思が過大に代表されている、民主主義が歪められるのではないかということになるだろう。そうすると、3つの問題が考えられる。「有権者の中に特に高齢者が多いのか」、それとも、「有権者の中での高齢者の割合に比べて、実際に投票する者の中での高齢者の割合が多いのか(=高齢者のほうが積極的に投票をするのか)」、あるいは、「有権者の中での高齢者の割合にくらべて、選挙結果において、高齢者の意思が特に強調されているのか」という問題だ。