東京の23区とは違う? 大阪都構想の特別区
これに関し、東京と大阪の大きな違いは財源配分の比率にある。 東京の場合、都に約45%、区に約55%の比率で配分しているが、大阪の場合、概ね都(府)に20%、区に80%と区側に手厚い配分になっている。それだけ特別区の権限、業務が多いことを意味するが、さらに設置から10年間は府から毎年20億円を加算される。これは特別区設置に伴う初期費用が約200億円掛かることを補償する意味合いを持つ。 大阪都構想ではこの約8割の原資を4特別区の財政力に大きな格差が出ないよう配分する。現在の大阪市に暮らす住民がどの区に住んでも同じ水準のサービスを受けられるよう設計されている。 都区財政調整のメリットは大都市内の経済力・財政力の偏在を住民サービスの面では顕在化させない、人にやさしい都市経営の手法だということ。よく言われる「サービスが低下する」「各区間に差が出る」という懸念は、筆者は当たらないと考える。むしろ公選区長、議会の政治主導による特別区運営で政策面、経営面、まちづくりに自治体間競争が生まれ、サービスの質は上がりコストは下がる可能性が高いと思われる。 東京都の都区財調では、都に配分される45%が23区以外に多摩地域の広域行政にも使われている可能性がある。これをよくデメリットと指摘する向きがある。なので、大阪の場合も府へ配分される20%分が大阪市域以外の広域行政にも使われ大阪市民は損をするのでは、とよく言われるが、大阪の場合は大阪府に都区財調の「特別会計」を設け、府に配分される20%全てが大阪市域で使われるようブロックし、透明性を高める仕組みだ。 ちなみに職員の体制だが、現在の大阪市職員約3万5300人のうち、特別区設置後、約1万5800人が区に、約1万9500人が都(府)に身分移管されることが想定されている。
都市経営の新たな手法
明治時代、大阪は日本で初めて「都市経営」という考えを打ち出した先進都市だ。御堂筋を開発し市電を通しながら開発を進め、そこで得られる開発利益を周辺地域から集め、それを原資に更に都市開発を進めていく。この都市経営手法は現在、「公営企業方式」として各地に広まっている。 都構想が実現すれば、こうした伝統を持つ大阪に100年ぶりに新たな都市経営手法が導入されることとなる。「大都市の意思決定の仕組み」を変えることで都市開発を進める、新たな都市経営手法の導入だ。 戦時体制下で行われた東京の府市合体と違い、「大阪都構想」は成熟し目詰まりになっている大阪全体の血流をよくし、副首都と呼べる新たな大都市をつくろうという構想だと筆者は考える。住民投票の結果に注目だ。