なぜ西武は6連敗を止めることができたのか…救世主はプロ2年目で初勝利の”ドラ7”上間永遠
「チームが勝っていれば上間をもう1、2イニングと考えますけど。やっぱり負けが込んでいて、絶対に今日は落とせないという気持ちが強かったので、ああいう形になりました」 過去2度の一軍での先発で、83球と71球だった球数も関係していたのだろう。上間自身も「今日のポイントは、点を取ってもらった直後の5回表だったと思います」と振り返る。 言葉通りに売り出し中の7番・山口航輝を、フルカウントから137kmのカットボールで空振り三振に斬る。8番・藤岡裕大も0-2と瞬く間に追い込むと、遊び球を使わずに142kmのカットボールでセンターへの平凡なフライに、途中出場の9番・柿沼友哉をフルカウントから142kmのストレートでセカンドゴロに打ち取った。上位打線と対峙するような気迫とパワーに満ちた16球だった。 「逆転した直後に失点してしまうと流れも変わるので、とにかく3人で抑えようと思っていました。5回が最後のイニングになったとしても、悔いが残らないように全力で投げました。ライオンズのリリーフ陣は信頼できる方ばかりですので、その後は安心して応援に回りました」 ギャレットから2019年のドラフト1位・宮川哲、豪腕セットアッパー・平良海馬、守護神・増田達至へと紡がれた無失点リレーが、上間へ待望の一軍初勝利をもたらした。同じ沖縄県出身で、昨シーズンの新人王に輝いた平良は、自身の登板では7試合ぶりに3人で仕留めたホールドをこう振り返った。 「上間投手の初勝利がかかっていたのでゼロで抑えようと、丁寧に投げました」 そして、平良、中村とともにスポットライトを浴びたヒーローインタビューで、辻監督から贈られたウイニングボールの行方を問われた2019年のドラフト7位指名で、独立リーグの四国アイランドリーグplus・徳島から入団した上間は、こんな言葉をマイク越しに響かせている。 「お母さんにあげたいと思います」 女手ひとつで育ててくれて、中学卒業後には自らが進学を希望した大分県の柳ヶ浦高校へと送り出してくれた母親の多美子さんへの恩返しにもなった白星を、辻監督はこう位置づけた。 「勝ったことで、選手もちょっとだけ肩の荷が下りた気がします。ただ、明日の試合がまた大事になってくるので。明日も選手たちは必死に勝ちにいってくれると思っています」 連敗中に生じてしまった借金は、まだひとつ残っている。楽天、ソフトバンク、ロッテで形成される上位陣に食らいついていくためにも、苦しみ抜きながらも最後は感動とともに手にした今シーズン11勝目の余韻を勢いに変えて、今井達也を先発マウンドに送る28日の5回戦で一気に完済を目指す。 (文責・藤江直人/スポーツライター)