なぜ西武は6連敗を止めることができたのか…救世主はプロ2年目で初勝利の”ドラ7”上間永遠
連敗の渦中にいてもプレッシャーはないと振り返った上間だったが、西武打線を3回までわずか28球で、1四球のみに封じたロッテの先発右腕、石川歩の好調ぶりが際立つなかで先に失点した。そこからの気持ちの切り替えぶりには、性格やセールスポイントが色濃く反映されていた。 「失点しても今度は最少失点で切り抜ける、まずは気持ちで負けない、と思いながら投げました。調子自体はよくも悪くもなかったですが、自分のボールは投げられたと思っています」 140キロ台中盤のストレートは決して速くはない。それでも腕を思い切り振り、インコースを強気に攻めてくる分だけ打者に威圧感を与え、だからこそ変化球も生きてくる。ロッテの4番・安田尚憲以下をこの試合で初めて三者凡退に打ち取った直後の4回裏。沈黙していた西武打線が上間の踏ん張りに応える。 連敗脱出へ向けて打順が組み替えられ、1・2番コンビを組んだ源田壮亮とスパンジェンバーグが連打で無死一、二塁のチャンスを作る。3番・森友哉が放ったレフトへの大きな飛球で、源田が果敢にタッチアップ。角中が三塁へ送球した間に、スパンジェンバーグも二塁を陥れた。 「(森)友哉の大きなフライが進塁打になったのが、非常に大きかったですよね」 飛球の深さや捕球する際の角中の体勢などを見極め、隙あらば、と狙いを定めていた源田とスパンジェンバーグの積極性を、もっと言えば“抜け目なさ”を辻監督も称賛した。 「あれで次のバッターの中村(剛也)も、ちょっと楽になったと思うので。中村も第1打席でやられたインコースへまた来るんじゃないかという予測のもとで、あれだけ厳しい球を打てるんだからね。やっぱり経験のあるベテランですね。見事なタイムリーでした」 カウント2-2から石川が投げ込んだインハイの威力あるストレートを、どん詰まりになりながらもパワーでレフト前へ落とした4番・中村剛也は、ホームを駆け抜けた源田とスパンジェンバーグを「ナイスラン!」と称えながら、自身の逆転打をこう振り返った。 「(上間が)本当に頑張っていたので何とか点を取りたい、勝ちたいと思っていました」 5回裏には貴重な追加点を“執念”で奪った。先頭の7番・呉念庭がレフト前へ流し打ち、続く山田遥楓が送ったチャンスで、9番・金子侑司が一塁線へゴロを放つ。ファーストの井上晴哉がベースカバーの石川へトス。その間に金子が一塁ベースを踏むも、一度はアウトの判定が下された。 すかさず辻監督がリクエスト。ビデオ判定の結果、金子の足が一瞬早かったと確認された。その後、源田のセカンドゴロの間に呉が生還したが、リクエストが認められなければ無得点でチェンジだった。 「下位打線でチャンスを作れば得点になりやすい。これは常識ですけど、そこでいい形ができて、本当にもぎ取ったという感じでしたけど、非常に大きな1点でしたね」 辻監督が振り返ったように、ペースを乱さない石川の前に6回以降はすべて三者凡退に抑えられただけに価値ある追加点だった。同時に頭を悩ませる問題も発生した。5回を投げ終えた段階で、球数もまだ80球だった上間を続投させるのか。あるいは継投策に入るのか。 弾き出された答えは心を鬼にして、勝利投手の権利を得たまま、上間からギャレットへのリレーを決めた。6回表のロッテが1番からの好打順だったことに加えて、理由はもうひとつあった。