「ハム・ソーセージ」「コンビニ弁当」は避けた方がいい?寿命を左右する「腎臓力」を高める最新養生法を医師が解説、“腎臓長持ち体操”も
痛み止めは控えて、室温は18℃に
生理痛や頭痛など痛みが現れると頼りがちなのが痛み止めの薬だが、上月さんは、過度な服用は控えてほしいとアドバイスする。 「痛み止めに含まれるアスピリンなどの成分は、腎臓の血流を促進するプロスタグランジンの合成を阻害します。腎臓病を患っている場合、痛み止めをのみすぎることで段階的に腎機能の働きが落ちていき、心不全に陥ることもあるのです。 特に、何日も連続して服用すると腎機能低下のリスクが高まってしまいます。痛みが強いときは仕方ありませんが、のむなら短期間にとどめてください」 ひざの痛みや腰痛を和らげるため、湿布を貼ったり、軟膏を塗る程度ならそれほど気にする必要はないというが、むくみが生じるなど違和感を覚えたら医師や薬剤師に相談しよう。 また、上月さんは冬の室温の管理が大切だと説明する。WHOが定める『住まいと健康に関するガイドライン』は、子供や高齢者、慢性疾患を患う人には18℃以上の室温を推奨している。気温が下がると血圧が上昇しやすく、腎臓にかかる負担が増えるという。 「就寝前に暖房を切ってしまい、早朝になると部屋が凍えるような寒さになるのは危険です。腎臓はもちろん、ほかの臓器にも負担をかけますから、暖房や毛布などで適正な温度に調節することが大切です」(上月さん・以下同)
ウオーキングで血流促進
加えて、毎日の生活に取り入れたいのが運動習慣だ。日頃から運動を行うことが腎機能の向上に役立つと、上月さんは説く。 「腎不全と心不全を患って透析治療を受けていた62才の男性に、運動療法を行っていただきました。すると、入院時には起き上がることも大変だったのが、退院時には楽に歩けるまでに体の機能が回復したのです」 腎臓の健康を保ち、腎臓病予防、改善に効く「腎臓を元気にする体操」。【1】準備体操 【2】ウオーキング 【3】筋トレを1日3セット行う。 その後、運動療法を2~3か月継続すれば、腎機能に改善がみられるという研究結果も示された。こうした成果をもとに上月さんが開発した運動療法は、【1】準備体操【2】ウオーキング【3】筋トレの順に行うというものだ(図参照)。 「慢性的な運動不足のかたは筋力が落ちていることが多いので、まずは体を動かすことを習慣づけることから始めてください。1日3セットが理想ですが、難しい場合は1セットでも構いません」 最初にかかと上げ下げなどの準備体操で体を柔らかくしてから、ウオーキングを開始する。ウオーキングは週に3~5回、1日20~60分、合計4000歩以上、歩けば歩くほど効果が高いとされる。 「ウオーキングには心臓の働きを活性化させ、腎臓に届く血液の量を増やす効果があります。また、長期的に行うと血圧や血糖値も下がり、コレステロールも減っていくので、腎機能を悪化させる生活習慣病の防止につながります」 ウオーキングで心がけたいのは正しい姿勢や腕の動き、そして継続して行うことである。これまであまり運動習慣がなかった人は無理をせずに、1日の運動を小分けに行ってもいい。 ウオーキングの後には筋トレを行う。いくつかあるメニューの中から、「壁押し」と「ひざ胸突き」を紹介するが、いずれかひとつをウオーキングと組み合わせて行うのがよい。繰り返すことで、腎臓の血流を改善する効果が期待できる。 「万が一、腎機能が低下しても、運動療法によって寿命を延ばせる可能性もあります。腎機能が低下しているといってあきらめずに、運動を継続していただきたいですね。ただし、運動のやり方は医師の指導下で行ってください」 私たちの体を健康に保つ、縁の下の力持ち・腎臓。腎機能の向上は、さまざまな病気の予防だけでなく、生活の質(QOL)の向上にもつながる。冬に向けて、“腎臓力”を上げることが、健康的な生活のカギとなる。 ※女性セブン2024年12月5日号