「ハム・ソーセージ」「コンビニ弁当」は避けた方がいい?寿命を左右する「腎臓力」を高める最新養生法を医師が解説、“腎臓長持ち体操”も
発見が遅れると透析が必要に
腎臓病治療の研究を行う東北大学名誉教授で、山形県立保健医療大学理事長・学長の上月正博さんも、「腎機能の低下がさまざまな病気のリスクになる」と警告する。 「腎機能が低下すると、体内にカリウムや血液尿素、窒素などの老廃物や毒素がたまりやすくなります。特に、糖尿病や高血圧などの生活習慣病の患者さんは、老廃物によって血管が狭まりやすくなるため、動脈硬化のリスクが高まります。さらに、老廃物が脳に回ると、意識障害につながることもあります。 こうした不調が重なると、やがては脳卒中や心筋梗塞、狭心症などの心血管疾患の原因になるため、腎臓を健康に保つことは寿命に直結します」 これほど重要な役割を果たす臓器にもかかわらず、腎臓は“沈黙の臓器”といわれ、著しく機能が低下しなければ自覚症状はほとんどない。機能が悪化すると、むくみや息切れ、だるさなどの倦怠感、血尿といった症状が出るため体調のちょっとした違和感を見過ごしてはいけない。
腎臓病に70代の3分の1、80代の2分の1が罹患
この10年の間、腎臓病の患者は国内だけで約150万人も増加しており、現在では約1480万人いると考えられている。 「腎臓病は70代の3分の1、80代では2分の1が患っているといわれる身近な病気です」(上月さん) 発見が遅れると透析が必要になるケースも多いため、日頃から腎臓をいたわり、“腎臓力”を鍛えることが健康寿命の延伸につながる。
ハム、ソーセージは×、塩は天然塩を
腎臓の状態を良好に保つためにまず気をつけたいのは、日常的に口にするもの。 「摂取を避けた方がいいものの筆頭格は食品添加物で、特に無機リンは腎臓の大敵です。ハムやソーセージなどの食肉加工品のほか、コンビニ弁当、ファストフード、カップラーメン、菓子パンなどにも多く含まれています」(高取さん・以下同) そもそも、リンは人間が生きていくうえで必須のミネラルのひとつで骨格を作るなどの重要な役割もある。ところが、過剰に摂取するとカルシウムを体外に排出させてしまうため、骨がもろくなり、骨軟化症のリスクが高まってしまうのだ。 「自然な食材に含まれる有機リンは20~40%だけ吸収されるのに比べ、無機リンは90%以上が吸収されます。リンは腎臓から排泄されますが、過剰なリンを排泄する際に生成される物質が血管を傷つけ、炎症の原因となります。 また、塩分の過剰摂取は腎臓に大きな負担をかけます。塩を使うなら、一般的な食卓塩ではなく、ミネラルを多く含み、塩分濃度が低い天然塩にしましょう。天然塩に変えるだけで、塩分制限と同じような効果が得られます」 加齢とともに、骨や筋肉を作るためにたんぱく質の摂取が推奨されるが、これも摂取量には要注意。摂りすぎたたんぱく質は腎臓で代謝され尿として排出されるため、過剰摂取は腎臓にとって負担となる。 「積極的に食べてほしいのは野菜や果物などの植物由来の食べ物です。ブロッコリーや果物に含まれるビタミンCや、玉ねぎに含まれる老化した細胞を除去するケルセチンは、腎機能を適切に保つ働きがあります」