地球外生命を探して -太陽系の“三大名所“をめぐる 1.火星
この横にしましまになっているの分かりますよね。このしましまっていうのは地層です。このしましまの地層がどうやってできるかっていうと、海とか湖の中で土砂が流れてきて、そこで静々と、泥が降り積もるような形でこのしましまができる。このしましまはすなわち、昔ここが海とか湖の底だったっていうことを表しています。 この下に見えているこのちょっと斜めになっている地層は、実はここの4階のブースに同じものがあります。同じものなんですけど、そっちは地球でできた波打ち際の地層。こっちは火星でできた波打ち際の地層。これ、よーく見て、これから上に行って見てもらうと、まったく同じものが火星と地球の上であります。両方とも波打ち際でできた地層です。 こっち側のブルーベリーみたいに見える丸い粒は、水と岩石との化学反応でできた小さい鉄の粒子です。こういうようなことから、火星は昔は水がたくさんあっただろう、地球と同じような環境だっただろうというふうに言われています。今みたいな探査がいろんな場所で行われて、火星はだいたい40億年ぐらい前、この地球と太陽系ができたのが45億年前です、それの5億年間、最初の5億年間ぐらいは、地球も火星もこういう姿だったろうというふうに考えられています。
ただ、今は火星、こうなっちゃって、乾燥してすごく寒い星になってしまっています。だからひょっとしてこういうことまで分かってきたら、火星は昔、まあその温暖な時期があって、海があったんだとしたら、そういうところに果たして生命がいたのかどうか。これが1つ、重要な今の疑問になっています。もう1つは、なんで今の火星はこういうふうに死の星になってしまったのか。一方、地球は今の環境を45億年間ずっと保っているわけですね。逆になんで地球はこうやって環境が保たれているのか。こういう2つが非常に大きな謎になってきています。 最後は、今の火星上に、もしこの40億年前に生命が誕生していたんだとしたら、今どこかに生き延びているのかどうか。生き延びているんだとしたら、どこをどうやって探せばいいのかっていうのが今の火星の最新の探査になっています。実際、そこの今言ったような疑問を解決する探査が、今現在行われています。この探査車、キュリオシティっていう探査車は、今も火星の上を走っています。さっき話したこのテーブルぐらいの2つの探査車をご紹介しましたけど、このキュリオシティの大きさは半端じゃないです。史上最大の火星探査って言われているぐらいで、この向こう側に人が立っているのが分かると思うんですけど、だいたい重さが1トン。つまり乗用車と同じぐらいの大きな探査車が今、火星の上を歩いています。 どこに着陸したかっていうと、左の上の山みたいなのが見えるんですけど、あれはもう昔、湖だったその底に堆積した泥の大きな堆積物の山です。つまり昔の地層が一番出ているところで、そこでキュリオシティは、ドリルを掘ってここの右下の絵のような穴を掘って、そこのサンプルをサンプリングして、つまり昔の泥をつかまえて、その中を調べました。 分かってきたことを2つだけご紹介したいと思います。これは本当に、この1カ月か2カ月くらいの間に分かってきたこと。1つは、昔の火星の湖だった泥をサンプリングすると、おそらくその中に有機物、つまりわれわれの体を作っているのと同じ成分のものが含まれていたということです。細かいことはあまりお話ししませんが、ここのいくつかシグナルがあって、化学分子の絵が書いてありますが、これは火星の上で見つかった有機物のほんのかけらです。ただ、これは生物の起源なのかそれとも何か別の起源なのか、そこまでは分かりません。ただ、有機物があったというのは1個、重要な発見。 もう1つは、今でも火星に生き物がいるかもしれないということに関して1つ大きなニュースがあって、それは、火星の大気の中にメタンっていうガスが噴出していることが分かりました。メタンっていうと、ガス、都市ガスの燃料になっているようなガスなんですけど、あれは基本的には化石燃料と言われて、昔の生き物が死んで、それが地層の中で分解されてガスになって出てきたものです。つまり、こういうガスが噴出しているっていうことは、火星にも昔、なんか生き物がいたのかもしれない。そういうようなことを予感させてくれる、非常に重要な成果になっています。