「東アジア流行文化共同体」の興隆に期待したい
日本のシンクタンク「言論NPO」と共同で毎年、日韓双方の世論調査を実施して発表している韓国のシンクタンク「東アジア研究院」によると、日本に対してよい印象を持っていると答えた人の割合は、調査を開始した2013年以降、最も高くなったようです。 建築家で、文化論に関する多数の著書で知られる名古屋工業大学名誉教授・若山滋氏は、「軍事的に分断されがちな東アジアを、若者を中心としたポップ・カルチャーの共通性が結びつける可能性」について考えを巡らせています。若山氏が独自の視点で語ります。
日本・韓国・台湾そして中国におけるポップ・カルチャーの共同マーケット
ひところ『冬のソナタ』というドラマが大ヒットして、韓国のドラマが日本で人気となった。一時の流行かと思っていたらそうではない。韓流ドラマは着実にこの列島に根を下ろしている。 また近年、韓国のアイドルが世界的な人気をはくしている。最初は日本の二番煎じかと思っていたが、どっこいそうではない。歌も踊りもルックスも韓国の方が上らしく、今や日本がこれを追いかけているという。戦後、韓国の流行的な文化は日本のあとを追う時代がつづいたが、その時代は終わりを告げたどころか、逆転現象が起きているといっても過言ではないのだ。 さらに最近は、台湾もこのマーケットに参加しつつあるようだ。そしてまだ表面上は共産主義の縛りが強く、最近は経済も治安も不安定化しつつある中国本土も、このマーケットに参加する可能性がある。ここで音楽、舞踊、映画、演劇などの芸能だけではなく、マンガ、アニメ、電子ゲーム、カラオケなども加えて、比較的若い層に広がりつつある「ポップ・カルチャー」を、日本語で「流行文化」と呼ぶことにしよう。 現在の東アジアは、中国の軍事拡張をめぐって政治的な分断が激化している。もちろん若者たちにはそういった政治意識は希薄なのだが、実は文化は戦争と密接に関係している。今回はそういった国際政治の視点も含めて「東アジア流行文化共同体」の可能性について考えてみたい。ここで単にマーケットではなく「共同体=コミュニティ」という言葉を使うのは、EC(ヨーロッパ・コミュニティ)に近いかたちの圏域連携を構想したいからである。